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Vol.14 「そこにいる」

 今回は水曜日の更新に間に合いませんでした。ごめんなさいね。

 しばらくロンドンに行っていました。鷺巣詩郎さんのリーダー作品集『SHIRO’S SONGBOOK』シリーズ最新作(今夏発売予定)の制作のお手伝いです。お手伝いって何よ?という疑問にお答えしますと、「そこにいる」ということです…まあ誤解を招きかねない表現ですが、「そこ」とは勿論スタジオの現場であり、ときに選曲の現場であります。アーティストと共に語り、考え、無形のアイディアに形を与える場です。
 鷺巣さんのシリーズ全作をずっとお手伝いしてきたのですが、今回の新作はいつにも増して力のある内容に仕上がっています。ライナーノーツには『SONGBOOK』シリーズ恒例の「鷺巣詩郎×松尾潔対談」も掲載予定です。お楽しみに。

 成田空港。搭乗待ちのラウンジで退屈まぎれにパスポートをめくっているうちにわかったのですが、96年発行のこの巻でイギリスの入国審査のスタンプは26個ありました。9年間で27個目、ということは、大体4ヶ月に1回くらいの割合で行ってるんですね、ロンドンに。考えてみれば前回の渡英が先の正月でしたから、確かにまあそんなペースなんでしょう。ちなみにアメリカのスタンプは46個。3位はぐっと差をつけられて韓国の6個。あれ、そんなものなの?韓国は20代の頃のほうがよく(長く)行ってましたな。

 ロンドンは4月の陽気。定宿のあるリトル・ベニスの川沿いの舗道は、日本でいうヤエベニシダレの如き桜が満開。それはそれは美しかったです。風に落ちる花びらがケツメイシのRYOJI君の歌声を思い出させます。スタジオ近くのノッティングヒルの商店街ではTシャツ姿が目立ちました。
 とはいえ、ロンドンの一日は四季のごとし。昼下がり、商店街を行き交う人たちを見物しながらパブでひとりビールを呑んで温まったカラダも、気がつけば肌寒い風に晒されてしまいます。ちょうどポートベローのフリーマーケットの日でしたから、いくつかの店で検討して70年代製とおぼしきアクアスキュータムのスイングトップを買いました。裏地に惹かれて。コンディション極上、20ポンド。まあ悪くない買い物でしょう。

 以前書いて評判がよかったので、以下、「食」についてまた少々。いいでしょ、海外だし。

 今回は食通の鷺巣さんの誘いでロンドンの中心部から遠く離れた長閑な村ブレイ(Bray)を訪ねました。現在イギリスにはミシュラン三ツ星レストランが3軒あるのですが、そのうちの2つ…The Waterside Inn と The Fat Duckがこの小さな村にあるから不思議なものです。今回は躍進著しいThe Fat Duckへ。シェフのヘストン・ブルーメンタール氏は私と同い年とか。非常に興味をそそられます。 
 The Fat Duckは小さなパブにリノベーションを施したシンプルな内装で、テーブルは8つくらい、客は30人で満員というところでしょうか。味も確かに素晴らしいですが、それにも増して彩りやプレゼンテーションに特徴が。まあスペインの「エル・ブリ」の流れを汲む新派なんでしょう。物語性の強い料理です。
 19日に4時間ほどかけてデグスタシオン(18皿)を味わったのですが、その日の朝に左翼系新聞The Guardianに写真入りで今度は「世界一」と報道されたため、テレビ局の取材チームが3社ほど店外で慌しく放送準備をする中での食事でした。

 そうそう、ブレイにほど近いウィンザー城にも寄りました。チャールズ&カミラのウェディングで最近ホットな場所ですな。ほんとですかな。その日はエリザベスの滞在を示す女王旗が風に靡いていました。周辺の土産物屋街ではご成婚グッズが早くも値崩れ起こしていましたよ。私はおふたりの写真が焼き付けられたマグカップを購入。世界で最も高貴かつ下世話なマグカップでありました。

 それでは、また来週。

 

 2001年発売のDVD『5.1 GOSPEL SONGBOOK / 鷺巣詩郎』

「鷺巣詩郎×松尾潔 対談」の特典映像つき

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