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Vol.17「あるセブン・デイズ~その1~」

 雨上がりの渋谷は緑のにおいがします。そんな季節、いかがお過ごしでしょうか。
 新しい学校、新しい会社、新しい街にはもう慣れましたか。

 このHPに寄せられるメールは、大きくいくつかに分けることができます。
 そんな中で常に一定数を保っているのが「松尾潔は普段どんな生活をしているの?」という内容のメールです。今回はそんな疑問にお答えすべく、私の普段の生活をご紹介したいと思います。

 先に言ってしまいますが、スタジオに籠ってレコーディングやミキシング等の音楽制作に明け暮れている時期は、もう単純極まりないですよ。自宅とスタジオの往復。それ以上でも以下でもない。まあそんな日々を細かくご説明しても意味がないんですけど。

 先週1週間のうちスタジオ作業は3日間。スタジオ作業のある日とない日の落差をご理解いただくためには相応しい7日間だったかもしれません。
 以下、お話しできる範囲内で。いささか端的に。

5月8日(日)
 午前、デスク作業。真昼、都内某所にて現在プロデュース中の新人アーティスト「K」と待ち合わせ。韓国料理店でランチ。味噌チゲ美味。食後しばし歓談、私の運転でそのまま某スタジオへ。車中ではR&B論議。彼がフェイバリットとして挙げるのはブライアン・マクナイト、ジェームズ・イングラム、エリック・ベネイ、ジェシー・パウエル、ベイビーフェイス。いずれも私がアルバム解説を手がけたアーティストたち。そりゃ話が合うはずだな。スタジオ着後、新曲のプリプロダクション。夕刻、いったん抜け出して渋谷へ。ジョン・レジェンドのライブ(前回コラム参照)を鑑賞。Maestro-Tさんの個人スタジオに立ち寄り、アレンジ打ち合わせ。深夜、「K」の待つスタジオへ戻る。

5月9日(月)
 午前、デスク作業。真昼、前日に引き続き「K」とスタジオ作業。午後、いったん中座し、山下達郎さんのファンクラブ会報誌「TATSURO MANIA」の取材を受ける。インタビューの達人・前田祥文さんにのせられてペラペラと。スタジオ作業深夜まで。

5月10日(火)
 午前、デスク作業。午後、東方神起の新曲会議。多数寄せられた楽曲の中からシングル候補曲を絞り込む。夕刻、某所にて会食。筒美京平(作曲家)、朝妻一郎(フジパシフィック音楽出版)、斉藤正明(東芝EMI)の三氏からなる定例会のゲストとして。船旅の話、美食とクリエイティビティについての話。朝妻氏よりバート・バカラックの非売品5枚組CDをいただく。夜、某スタジオへ立ち寄り、昨日までの「K」の音源を確認。深夜に帰宅後、再びデスクに向かい企画書数枚。

5月11日(水)
 午前よりデスク作業。企画書数枚。夕刻、現在プロデュース準備中の某女性シンガーと対面。デビューして数年、シングル10数枚をリリースしながらも商業的成功に恵まれない彼女の今後を相談される。デモ曲を聴きながら具体的にやりとりを。私との音楽的接点は薄いが、それでも歌声には抗しがたい魅力を感じる。結論には至らず。

5月12日(木)
 午前、デスク作業。午後からは趣味の時間を過ごす。夕刻よりジム。ライター活動がメインだった20代はゴルフやダイビングにも出かけていたが、30代でプロデュース活動が忙しくなってからは遠出を要するスポーツから離れ、学生時代から馴染んでいるウェイトトレーニングとランニングに戻った。ときに水泳もするが、高校時代に水泳部の先輩にシゴかれた経験がトラウマとなってどうも本気になれないんだなあ。

5月13日(金)
 真昼、某書店でCMプランナーの澤本嘉光さん(電通)と待ち合わせ。私が遅れて店に着くと、澤本さんは大きく新聞を広げて読んでいる。はて。妙な光景。近づけば、読むのは新聞にあらず、地図なり。私に気づき慌てて挨拶する澤本さん。「僕、区画整理された町が好きなんですよね…」と言いながら畳む地図には大きく『杉並区』とあった。ランチの後、二人きりのブレインストーミングをえんえんと6時間。夜、仲の良いメンバー4人が集まって会食。CMプランナー箭内道彦さん(風とロック)のダイエット話が面白い。箭内さんとは博報堂在籍中の1997年にタワーレコードの『NO MUSIC, NO LIFE』広告でご一緒して以来のお付き合い。CHEMISTRY命名発表前夜に相談に乗っていただいたことが懐かしい。そのまま呑み歩き、渋谷円山町の某バーで作曲家の妹尾武さんと合流。彼とは先月この店でケイコ・リーさんと一緒に呑んで以来。いつもお洒落な人。痛飲。旧い日の終わりと新しい日の始まりを告げるカラス。

5月14日(土)
 午前、日本橋にて落語家・柳家花緑さんの定例会。某誌の座談会で知り合った花緑さんが主宰するこの隔月イベントに私が通うようになって、はや3年目。そのまま花緑師匠、林家きくおさんとランチ。落語とジャズボーカルの類似性などについて大いに語りあう。きくおさんは初対面だが、その顔立ちが父君の林家木久蔵師匠の若い頃によく似てきたという話で盛り上がる。とぼけた味が面白い。食後、花緑さんと一緒にタクシーで有楽町マリオンへ行き、彼が出演する『朝日名人会』へ。つまりこの日は花緑さんづくし。彼にかぎらず、毎年5月の『朝日名人会』清風篇はたまらないラインナップ。花緑師匠のほかにも神田山陽、柳家喬太郎、林家彦いち、三遊亭歌武蔵という顔ぶれ。若手の人気者が勢ぞろいなのだった。大いに笑い、すこし泣く。夕刻、ジムへ。

 以上、私の「あるセブン・デイズ」でした。ちょっとブログ風でしたね。

 それでは、また来週。

 

 箭内道彦さんの代表的お仕事より。8年前の撮影。

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