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Vol.57「過去原稿再録:『25ans』(2001年8月号)CULTURE SUPPLEMENTSより」

 海外旅行シーズンですね。僕も仕事柄、海外へ行くことが多いのですが、迷いがちなのが自分のための旅みやげです。友人や知人へのみやげはそこまで迷わないのですが、「マイみやげ」となると目的が違うので。何度旅しても、いや何度も同じ場所を訪ねるからこそ、その都度そこで自分が呼吸していた証が欲しいものです。いわば、日記がわりの旅みやげ。最近僕のマイみやげの定番は、ご当地で編まれたコンピレーションCDです。コンピレーションとは複数のアーティストの作品がひとつのパッケージに収められた商品のことで、日本でも最近はヒーリング系のコンピレーション・アルバムが大きなセールスを挙げていますね。

 コンピレーション先進国といえばイギリス。大型CDショップでは入口そばで大きなスペースをとって販売されていて、特にダンス~R&B系アルバムの充実ぶりには目を見張るものがあります。まめにアップデイトされるウェブサイトのように、日本では考えられない短いインターバルで新作が次々にリリースされるのです。僕もロンドン出張の際、いつもクラブに遊びに行く時間が確保できるわけではないので、仕事の合間に買ったコンピレーション最新盤を聴きながら早朝の街を散策したり、ホテルのバスルームで寛ぐのが楽しみのひとつになっています。

 イギリスでコンピレーション市場が活況を呈しているのには理由があります。アーティストの所属レーベル(レコード会社)の枠をなかなか超えられない日本と違って、かの国ではレーベル間での音源の貸し出しも立派なビジネスとみなされているのです。シングルCD市場が成熟している日本では、リリースされたばかりのシングルがコンピレーション、ましてや他社のアルバムに収録されることなどまずあり得ませんが、「シングルはプロモーションツール、ビジネスはアルバムで」という発想が強いイギリスではこれが成立してしまうというわけです。

 まあ仕組みはともかく、短い滞在を強いられるツーリストにとって、手早く旅先の音のトレンドを押さえられるのは嬉しいかぎり。ジャケットもお洒落、値段もお手頃ですし。それぞれ2枚組ですが、いずれも市場価格は3千円程度でした。今東京で聴いても滞在時の空気が甦ってきます。トレンドに敏感なあなたにも、格好のマイみやげとなるでしょう。共に日本でも大型輸入盤店で入手できます。ご参考までに。

※ 今週は松尾潔多忙につき、書き下ろしコラムはお休みし、過去の原稿を再録いたしました。

 
左『Twice as Nice』
人気DJふたりによる2枚組コンピレーション。2ステップなどの新しいムーヴメントを生み出している、最新盤のUKガラージシーンも把握できる(輸入盤)
右『THE LICK PRESENTED BY TREVOR NELSON』
イギリスのブラック・ミュージック・シーン最重要人物のひとり、トレバー・ネルソンのひと味違うセレクション(輸入盤)

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