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Vol.2 「華麗なるソウルの週末」

 いささか旧聞に属しますが、年頭のお話を。
 ここ数年、年末年始はヨーロッパで過ごすことが続きましたが(またいつかこのコーナーでお話ししましょう)、今年は数年ぶりに故郷の博多で正月を迎えました。高校の先輩たちと中洲の街で痛飲したりして。大学まで同じだったのに15年ぶりくらいに会う方もいたりして。楽しかったなあ。

 いったん東京に戻り、スタジオにこもって今春デビュー予定の新人女性シンガーのレコーディング。その後すぐに川口大輔さんと連れ立ってイギリスはブラックプールなんて辺鄙な場所に飛び、1月7,8,9日の3日間にわたってヒルトンホテルのボールルームで行われたJazz FM/Smooth FM主催のイベント『Luxury Soul Weekend』に参加してきました。余談ですがブラックプールはボールルーム・ダンス、日本で言うところの社交ダンスの聖地として知る人ぞ知る街。映画『Shall We ダンス?』でもロケ地になってましたね。

 さて、このイベントの2000人程度の参加者のほとんどはロンドンやマンチェスター周辺のR&B/ソウル・マニアたち。白人7:黒人3って感じでしょうか。唯一ならぬ唯ニのアジア人である私と川口さんはたいへんな厚遇を受けました。みんな物珍しかったんでしょうね。私が半ば無理矢理誘った川口さんもこの厚遇には上機嫌。スコットランド訛りの強い白人中年女性にお色気攻撃受けてましたよ彼。

 イベントの基本フォーマットはノーザン・ソウル。この言葉についてはやや説明が必要でしょう。早い話がイギリス独特の「聴き方」です。詳しく話を始めると長くなるので強引にまとめると「日本におけるフリー・ソウルのイギリス中年版みたいなもの」。ま、それじゃフリー・ソウルと全く別物じゃないかとご指摘を受けそうですが。ええ、別物ですとも。

 テリー・ジョーンズをはじめとする著名なノーザン・ソウルDJたちのパーティーが主なメニューです。会場ではロンドンやマンチェスター周辺のR&B/ソウル・ファン相手のレコード/CD即売会も開かれ、ちょっとした「レコード祭り」(このフレーズにはいつでも胸ときめく!)の様相を呈していました。私はギネスビールの海に溺れ、押し寄せるローストビーフの波で2キロばかり太って帰ってきましたよ。旅先じゃ私の胃袋はいつも楽観的。合衆国の石油をガブ呑みするがごとし。それじゃ嫌われるって。

 で、私が楽しみにしていたこのイベントのメイン・メニューが「グレン・ジョーンズ/ハワード・ヒューイット/フィル・ペリー」という3人の偉丈夫による一夜限りのスペシャルライブ。80~90年代のR&B/ソウル・ファンには説明不要でしょう。3人が3人とも実力派ソロとして一時代を作ったシンガーたちです。マニア向けに言うとそれぞれモジュレーションズ、シャラマー、モントクレアーズというボーカル・グループの看板だった人たちね。私は彼らのライナーノーツを書いたりインタビューをしたりしているので、この3人が一堂に会するのは感慨深かったです。いちばん凄みがあったのは実績では他の2人に劣るフィル・ペリー。あんた、最高だよ。なんて言いつつ、終演後ただひとりお話しできたハワード・ヒューイットには「You’re the best!!」と言っておきましたが。調子いいわねえ、この坊やは。と言われ続けて37年。 

 思い起こせば私がはじめてアルバムのコンピレーション作業を手がけたのは、90年にP-Vineからリリースした『スロー・モーション』なんですが、ここでハイライトの一つになっていたのがモントクレアーズの”Dreamin’ out of Season”でありました。選曲・解説・アルバムタイトルつけてギャラ総額5万円ナリ。それでも当時学生だった私には嬉しかったなあ。モジュレーションズのCD復刻でもお仕事させてもらいましたP-Vine。懐かし。

 話戻ってノーザン・ソウルDJたち。ある意味ハワード・ヒューイットより嬉しかったテリー・ジョーンズ先生との対面でしたが、彼にかぎらずノーザン・ソウルDJたちはもう頑なにドーナツ盤しかプレイしないんですね。噂には聞いていましたが。あの根性は見上げたものです。まぎれもなく英国オリジナルの文化であります。ローカライゼーション魂ここにあり。本国アメリカの「ソウル聴き者(ききしゃ、と発音してください。いま作ったけど)」たちにはこの視点はあらかじめ失われている。ああシンパシー覚えますイギリスのソウル聴き者たちよ! 

 会場では、そんな英国の豊穣なソウル文化が生み出した専門レーベルExpansionそしてDomeのA&Rマンたちと社交してきました。さすがに英日の好事家同士、初対面の感じはしませんでしたなあ。昨年Expansionから出たエムトゥーメイ&ルーカスのベスト盤の選曲にケチつけようかと思っていたけど、コンパイラーのラルフ・ティー氏に会ったら一発で許しちゃったです!お土産CDまでくれちゃうんだもの、毒舌出る間なし!
 というわけで、マニアたちの宴はギネスビール色した良き想い出になりました。 

 帰りにはロンドンに立ち寄って、老舗ジャズ・クラブ『ロニー・スコッツ』へ行ったり。かの地2度目となるロイ・エアーズのライブを観たりして日本との「温度調整」に努めました。まあロンドンでの出来事は次回以降にお話ししますか。スペースも時間もたっぷりあるもんね。と、ホームページ開設のヨロコビを噛みしめる私。

 それでは、また来週。

 

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