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Vol.072 「過去原稿再録:読売新聞(東京版)2009年9月16日より」

 

歌いつづける人生が夢だった。

歌うことは生きることだった。

 

歌う私を見て、古いシネマのヒロインのようだと人は言った。

数年後、ほんとうに映画のヒロインになった。

おおぜいの傷ついた兵士のために歌ったことがある。

私の声は子守唄のように癒してくれると彼らは言った。

 

ほんとうの愛の意味も知らずに愛を歌っていた。

それでも人は聴いてくれた。涙をながしてくれた。

ここにはうつくしい愛があると。

 

運命の恋をして、命をかけてその人を愛した。

新しい生命を授かり、本物の子守唄を歌った。

傷つけあうことで情熱をたしかめた。

うしなった愛に悔いはない。

 

新しいだけのうたはいらない。

最高のうたを歌いたい。

今ならば、今だから、私に歌えるうたがある。

夢はとりもどせる。

 

 

松尾

 

 

*ホイットニー・ヒューストンさんがお亡くなりになりました。享年48。
2009年、『アイ・ルック・トゥ・ユー』日本発売にあたり松尾潔が寄せた散文詩をここに再録し、
追悼の言葉と代えさせていただきます。May her soul rest in peace!

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