Home > column > Vol.073 「過去原稿再録:『BRUTUS』(1995年3月1日号)スパイク・リー in ブルックリン」

Vol.073 「過去原稿再録:『BRUTUS』(1995年3月1日号)スパイク・リー in ブルックリン」

 『マルコムX』はアメリカよりむしろ日本で受けた。そのことにはとても感謝してるし、とてもうれしい。日本人は私のことをよく理解してくれるんだね(笑)

 私の映画が公開されると、批評家はそこに政治的、民族的な意味を見出そうとする。日本でもそういう状況があることは知っている。私の映画の構図や配色といった技法的側面に目を向ける人はそうそういない。

 でも、だからといってそれが不満かといえばそうでもないんだ。そういった見方が間違っているわけではないし、第一、そういう視点で私の映画を観てくれるのは本意だし。

 日本の映画監督だと黒澤明が好きだ。前回日本に行った時に実は対談することになっていたんだけれど、あいにく彼が病気のとのことで会えなかった。残念だったよ。あ、日本に行ったのは映画学校から招かれたからなんだけれどね。

 あと小津安二郎も勅使河原宏もいいね。彼らの映画は好きだ。

 日本人で知っている人?オウ。王貞治。なに? 彼は日本人じゃない? チャイニーズだって? でも日本で生まれ育ったんだろ? 王が日本人じゃないとしたら、国民的英雄をひとり失っちゃうようなもんじゃないのか?

 そうそう、『戦場のメリークリスマス』に出てた音楽家……誰だったっけ?坂本龍一? そうだそうだ。彼の音楽はとても好きだよ。

  95年が映画誕生100年ということは知っている。映画というものは、つまり……時の流れという淘汰を宿命づけられているんだ。例えば89年、私の『ドゥ・ザ・ライト・シング』がオスカーの候補に挙がった時、結局受賞したのは『いまを生きる』のほうだった。でも、今でも観つづけられているのはどっちだい?いい映画というものはそうやってしっかりと残っていくものなんだ。

 ブルックリンで育ったけど、ジョージアのモアハウス大学に行った。それからNYUに入って映画を真面目に勉強した。今一緒に仕事をしている仲間はNYU出身が多い。私の映画でよく撮影監督を務めてくれるアーネスト・ディッカースンも古い仲間だ。彼は本当に素晴らしいカメラマンだよ。

 今、マーティン・スコセッシと一緒に仕事をしている。『クロッカーズ』(原作 / リチャード・プライス)という殺人ミステリーなんだけれど、私が監督、彼はプロデューサーをやっている。いいかい、殺人ミステリーといっても『ディープ・カヴァー潜入捜査』みたいなもんじゃないからね。一緒くたにするなよ。

その次は『ジャッキー・ロビンスン物語』。これは97年公開。97年はジャッキーが黒人として初めて大リーグに入ってからちょうど50周年なんだ。彼を演じるのはデンゼル・ワシントン。期待してほしい。

※事務所から古い原稿が発見されたので掲載します。199412月、当時26歳の松尾がニューヨークのブルックリンへと出向き、スパイク・リーのオフィス(40 Acres and a Mule Filmworks)で行った対面取材をまとめた原稿ですが、『BRUTUS』担当編集者の方のミス(?)で松尾のクレジットがないまま同誌に掲載されたという曰く付きのもの。そのことに憤り落胆した松尾が、以後ライター業から音楽プロデュース業へと転向してゆく一因ともなったそうです…。

Home > column > Vol.073 「過去原稿再録:『BRUTUS』(1995年3月1日号)スパイク・リー in ブルックリン」

Return to page top