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Vol.3 「ママ・ユースト・トゥ・セイ」

 読者諸兄諸嬢は風邪などお召しになってはいませんか。流行ってるんですよねインフルエンザ。そちらも是非お気をつけになってくださいな。ま、風邪とインフルエンザは別物だといいますが。

 私はこの数年というもの殆ど風邪をひいたことがありません。予防法は外出後のうがいと手洗い。5年くらい前に確か近田春夫さんか鷺巣詩郎さんからお聞きしたんですよ。この予防法を習慣づけてからは、シリアスな風邪とは無縁になりました。ひきかけても大事には至らず。結局これが一番効くみたいです。海外出張の時なんてちょっと面倒くさいけど、それでも治療より予防のほうが簡単ですから。
 ここで一首。「路駐して高い罰金払うより 先に入れちゃえパーキング」 

 では先週のお話の続きを。
 ブラックプールでノーザン・ソウルの洪水にまみれた私と川口大輔さんは、その後マンチェスター経由でロンドンに立ち寄りました。

 ロンドンにはかれこれ30回ほど行ってる私ですが、川口さんとのロンドンはこれで3、4回目でしょうか。彼とはこの2年ほど仕事で何度か一緒に洋行してます。ロンドン、ホノルル、NY、シドニー…と書いてその多さにちょっと驚きましたが。

 若き作曲王・川口大輔の旅先での洋服の買いっぷりには凄いモノがあって、その様子を隣で見るのを毎回ひそかな愉しみにしています。ここだけの話、高いものほど値札見てないような気がしますよ作曲王。服が好きなことにかけては人後に落ちない私も、川口さんの暴れ買いを間近で見てるともう買わなくていいかって気になっちゃいます。

 思えば幼い頃、夕餉の準備を終えた母親の口癖は「母さんは料理作りながら見よったら(=見てただけで)お腹いっぱいよ」でした。そんな母のいにしえの口癖をずっと「そんなこと言っちゃって実はつまみ食いしてるだけじゃないの?」と曲解してきたわけですが、なるほど、視覚が満腹感を生み出すこともあるんですな。母よあなたは正しかった。なんて独りごちるコベントガーデン。
 以上、UKソウルにちなんで言えば、極私的ママ・ユースト・トゥ・セイ、の記。

 ま、川口さんの名誉のために言っておくと、無闇に買いまくるだけじゃなくて彼は実際イイもの買ってますね。はっきりとした顔立ちにジャマイカ帰りの焼けた肌、スリムなボディ。今回ご購入のオズワルド・ボーディングのシャイニーなドレスシャツ、あんなに似合う日本人はそうそういません。一重瞼のうっす~い顔した私は実に羨ましい。

 「そんなにロンドン行ってると、もう住んでるみたいなもんでしょう。いつもどこで遊んでるんですか?」 なんてよく訊かれます。が、私のマインドはいつもツーリスト。いつも滞在日数が短いですもん。1週間以上ステイした経験なんて数えるほど。ホテル事情には精通しても、住んでる感覚なんて、とても。

 とはいえ確かに、ツーリストの真実、はあります。それをすべて開陳するのが本コラムの主旨ではないけれど、ショート・トリップを重ねてきた立場から忌憚なく言うと、定点観測的な場所がいくつかあればその都市を身近に感じやすいとは思いますね。

 ロンドンにおけるMy定点観測スポットのひとつが、昨年(2004年)に開店45周年を迎えたソーホーの老舗ジャズ・クラブ『ロニー・スコッツ(Ronnie Scott’s)』
 マイルスやディジーやエラといったジャズ・ジャイアンツにかぎらず、ここのステージを踏んだR&Bアーティストも少なくないです。カーティス・メイフィールドをはじめとして、ここでのライブをアルバム化した御仁も実に数多い。

 私はここの赤い薄明かりの中で見るショウが大好き。大学の小さめの階段教室を思わせる構造。5人編成バンドでも窮屈な狭いステージ。ぬるめのベックス・ビール。イギリス的諧謔に満ちた野次。そのすべてがツーリストにはいとおしい。隣接するインド料理店か、向かいのカプチーノの名店『カフェ・イタリア』で腹ごしらえして行けばなお良し。

 今回ロニー・スコッツではビブラフォン奏者にしてシンガーのロイ・エアーズを観てまいりました。実は東京出発前からお店に予約を2名分入れておいたのでした。ここでロイさんはもう10年以上にわたって出演しています。ライブ・アルバムも何枚か。ロイ・エアーズ@ロニー・スコッツ体験はこれで2度目ですが、この地での彼の愛され具合は凄いなあと痛感しました。地元出身でもないのに熱烈に愛されている。その意味で、ニューオーリンズのフランキー・ビバリー人気を思い出さずにはいられません。

 ここ数年のロイ・エアーズ@ロニー・スコッツは、ロイさんとレイ・ガスキンスの双頭バンドと言ったほうが正確で、実際今回のライブでもレイさんのMCや歌を大きくフィーチャーしていました。レイさんは米国ボルティモア出身で、NYを経てロンドンに流れてきた鍵盤奏者にしてサックス奏者そしてシンガー。リーダー・アルバムはそんなに面白いものではないけれど、ライブ番長ではあります。まあ旅先だから採点は常に甘いよ。

 余談ながら80~90年代のロイ・エアーズ・グループの看板ギタリスト、ザッカリー・ブルーは97年2月27日にマイアミで亡くなりました。もうすぐ命日ですね。確か、溺れている女性を助けようとして死んだのではなかったかな。36歳でした。

 日本のオッシャレーな音楽ファンのみなさまにおかれましては、おそらくはロンドンのジャズ・クラブといえばまず真っ先にカムデンタウンの『ジャズ・カフェ(The Jazz Cafe)』なのでありましょう。店名が店名ですしね。まあ確かにあそこもいい雰囲気です。

 ここで録音され、なぜか日本だけでリリースされたディアンジェロのライブ・アルバムは世界中のR&Bファン垂涎の1枚とされています。個人的な思い出としては、アメール・ラリューが2000年にソロ・デビューした際のアルバム発売記念ライブを、鷺巣詩郎さんご夫妻、みとともみ嬢と一緒に観に行ったのが懐かしいなあ。呼び込みのMCはシャーデー/スウィートバックのスチュワート・マシューマンで。ブライス・ウィルソンと訣別してのソロ・デビューなのに、アンコールで1曲だけやったグルーブ・セオリー時代の”Tell Me”に客が異様に盛り上がる。それに困惑していたラリューさんが何ともお気の毒でした。

 ロイ・エアーズ@ロニー・スコッツに話を戻せば。終演後、酔い覚ましに周辺をふらふらと歩いていたら、アーカイブものに強い酒屋が目に入りまして。閉店間際のところにすべり込み、モルトスコッチ『ザ・グレンリヴェット』の1968年モノ(私と同い年ってことです)を購入いたしました。次の帰省時あたりには父親と一献かたむけようかしらん。

  ソーホーといえば、今回はミュージカル『メリー・ポピンズ』観てきましたよ。ロンドン最終日の朝、早めの便で帰る川口さんをホテルで見送った後、マチネーを。運良く当日のキャンセル券を定価の半額ほどで買えたので、浮いたお金でムール貝つまみにベルギービール呑んで。ひとり酩酊状態での観劇でした。

 メリー・ポピンズ。昨年はジュリー・アンドリュース主演の映画が公開40周年だったそうで、ロンドンではそれを記念した舞台が年末から始まりました。私がもともとミュージカル好きというのもあるけれど、今をときめくマシュー・ボーンがコリオグラフィーを担当しているというので気になっていたのですよ。これを観ることができたのはラッキー。主演のローラ・ミシェル・ケリーに未来を見ました。  

 それでは、また来週。
 14日のグラミー賞@WOWOWでお会いしましょう。
 

 

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