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2005-05

Vol.18「ステッピンアウト!」

 大雨が降ったり、さわやかな陽気になったり、そんな今日この頃。
 昨夜はいま久しぶりにご一緒している今井大介さんと、仕事終わりに二人で痛飲しました。ワインバーを皮切りに、シングルモルトのバー、シメはラーメン屋さん。R&Bとジム通いが好きという共通項がある二人、一軒目ではフィットネスの話で盛り上がっていたのに、最後にラーメン食べちゃ意味ないです。でも美味しいんですねえ、これが。
 ま、背徳感は最高のスパイス、というお話。人生がそうだとは言わないけれど。

 今日(5月25日)は大竹佑季ちゃんのデビュー日です。とにかく素敵な歌声の合唱少女がいると聞いて、仙台の某有名女子高を訪ねたのは彼女がまだ16歳の冬でした。ストーブの懐かしい温もりにつつまれた音楽室でジャージ姿の合唱部員たちに囲まれ、ちょっとドキドキしたことをよく覚えています。
 そんな佑季ちゃんも先週末にはめでたく18歳に。今日のデビューはもっとめでたいですな。俗に言う「盆と正月がいっぺんに」って感じ?よかったね、佑季ちゃん。

 さて、本日5月25日は私の周辺でもうひとつめでたいことが。
 長年にわたる知人である『バァフアウト!』編集発行人の山崎二郎さんが、『バァフアウト!』本体とは別に、まったく一人で立ち上げ、編集された雑誌『ステッピンアウト!』が本日創刊なのであります。

 『STEPPIN’ OUT!』(ステッピンアウト!)Volume 0
  発行 ティー・シー・アール・シー http://www.barfout.jp

 この数年というもの、巷では30~40歳代という年齢層をターゲットにしたラグジュアリーな男性誌がちょっとしたブームというか市場を形成しています。それはそれで読むのは嫌いじゃない私。ただ、80年代に『宝島』、90年代に『バァフアウト!』を読んで青春を過ごしてきたオレは今何読んだらいいのさ!とお嘆きのサブカルチャー愛好者も少なくないようです。そんな諸兄におかれましては、ラグジュアリー系男性誌のトーン&マナーにはちょっと違和感があるんでしょうな。それはそれで理解できる私。

 で、ミスター・バァフアウト!の山崎二郎さんが昨今の男性誌ブームに対して出した回答、それが『ステッピンアウト!』なんですね。私も1982年の発表当時にシビれまくっていたジョー・ジャクソンの名曲に由来する誌名もさることながら、とにかく山崎さんの本気が凄いです。ほんの微細なことから全部ひとりでやっていらっしゃいます。私も彼との対談に呼ばれていろいろと楽しくお話ししてきました。座談の名手とは彼のような人のことを言うのでしょう。自分でも忘れかけていたような記憶をたくさん引き出されました。脳をゆっくり開かれる感じ、と言えばよいのかな。「おすすめディスク」なんて企画もあります。是非ご一読を。

 あ、そういえば山崎さんもジム通いの人でありました。その理由は「野球がうまくなりたいから」ですと。さすが、年季の入った少年です山崎さん。

 それでは、また来週。

 


ジョー・ジャクソン『Night and Day』(1982)
LPの中写真には、スタジオにマービン・ゲイのベスト盤を
持ち込む彼の姿が。

Vol.17「あるセブン・デイズ~その1~」

 雨上がりの渋谷は緑のにおいがします。そんな季節、いかがお過ごしでしょうか。
 新しい学校、新しい会社、新しい街にはもう慣れましたか。

 このHPに寄せられるメールは、大きくいくつかに分けることができます。
 そんな中で常に一定数を保っているのが「松尾潔は普段どんな生活をしているの?」という内容のメールです。今回はそんな疑問にお答えすべく、私の普段の生活をご紹介したいと思います。

 先に言ってしまいますが、スタジオに籠ってレコーディングやミキシング等の音楽制作に明け暮れている時期は、もう単純極まりないですよ。自宅とスタジオの往復。それ以上でも以下でもない。まあそんな日々を細かくご説明しても意味がないんですけど。

 先週1週間のうちスタジオ作業は3日間。スタジオ作業のある日とない日の落差をご理解いただくためには相応しい7日間だったかもしれません。
 以下、お話しできる範囲内で。いささか端的に。

5月8日(日)
 午前、デスク作業。真昼、都内某所にて現在プロデュース中の新人アーティスト「K」と待ち合わせ。韓国料理店でランチ。味噌チゲ美味。食後しばし歓談、私の運転でそのまま某スタジオへ。車中ではR&B論議。彼がフェイバリットとして挙げるのはブライアン・マクナイト、ジェームズ・イングラム、エリック・ベネイ、ジェシー・パウエル、ベイビーフェイス。いずれも私がアルバム解説を手がけたアーティストたち。そりゃ話が合うはずだな。スタジオ着後、新曲のプリプロダクション。夕刻、いったん抜け出して渋谷へ。ジョン・レジェンドのライブ(前回コラム参照)を鑑賞。Maestro-Tさんの個人スタジオに立ち寄り、アレンジ打ち合わせ。深夜、「K」の待つスタジオへ戻る。

5月9日(月)
 午前、デスク作業。真昼、前日に引き続き「K」とスタジオ作業。午後、いったん中座し、山下達郎さんのファンクラブ会報誌「TATSURO MANIA」の取材を受ける。インタビューの達人・前田祥文さんにのせられてペラペラと。スタジオ作業深夜まで。

5月10日(火)
 午前、デスク作業。午後、東方神起の新曲会議。多数寄せられた楽曲の中からシングル候補曲を絞り込む。夕刻、某所にて会食。筒美京平(作曲家)、朝妻一郎(フジパシフィック音楽出版)、斉藤正明(東芝EMI)の三氏からなる定例会のゲストとして。船旅の話、美食とクリエイティビティについての話。朝妻氏よりバート・バカラックの非売品5枚組CDをいただく。夜、某スタジオへ立ち寄り、昨日までの「K」の音源を確認。深夜に帰宅後、再びデスクに向かい企画書数枚。

5月11日(水)
 午前よりデスク作業。企画書数枚。夕刻、現在プロデュース準備中の某女性シンガーと対面。デビューして数年、シングル10数枚をリリースしながらも商業的成功に恵まれない彼女の今後を相談される。デモ曲を聴きながら具体的にやりとりを。私との音楽的接点は薄いが、それでも歌声には抗しがたい魅力を感じる。結論には至らず。

5月12日(木)
 午前、デスク作業。午後からは趣味の時間を過ごす。夕刻よりジム。ライター活動がメインだった20代はゴルフやダイビングにも出かけていたが、30代でプロデュース活動が忙しくなってからは遠出を要するスポーツから離れ、学生時代から馴染んでいるウェイトトレーニングとランニングに戻った。ときに水泳もするが、高校時代に水泳部の先輩にシゴかれた経験がトラウマとなってどうも本気になれないんだなあ。

5月13日(金)
 真昼、某書店でCMプランナーの澤本嘉光さん(電通)と待ち合わせ。私が遅れて店に着くと、澤本さんは大きく新聞を広げて読んでいる。はて。妙な光景。近づけば、読むのは新聞にあらず、地図なり。私に気づき慌てて挨拶する澤本さん。「僕、区画整理された町が好きなんですよね…」と言いながら畳む地図には大きく『杉並区』とあった。ランチの後、二人きりのブレインストーミングをえんえんと6時間。夜、仲の良いメンバー4人が集まって会食。CMプランナー箭内道彦さん(風とロック)のダイエット話が面白い。箭内さんとは博報堂在籍中の1997年にタワーレコードの『NO MUSIC, NO LIFE』広告でご一緒して以来のお付き合い。CHEMISTRY命名発表前夜に相談に乗っていただいたことが懐かしい。そのまま呑み歩き、渋谷円山町の某バーで作曲家の妹尾武さんと合流。彼とは先月この店でケイコ・リーさんと一緒に呑んで以来。いつもお洒落な人。痛飲。旧い日の終わりと新しい日の始まりを告げるカラス。

5月14日(土)
 午前、日本橋にて落語家・柳家花緑さんの定例会。某誌の座談会で知り合った花緑さんが主宰するこの隔月イベントに私が通うようになって、はや3年目。そのまま花緑師匠、林家きくおさんとランチ。落語とジャズボーカルの類似性などについて大いに語りあう。きくおさんは初対面だが、その顔立ちが父君の林家木久蔵師匠の若い頃によく似てきたという話で盛り上がる。とぼけた味が面白い。食後、花緑さんと一緒にタクシーで有楽町マリオンへ行き、彼が出演する『朝日名人会』へ。つまりこの日は花緑さんづくし。彼にかぎらず、毎年5月の『朝日名人会』清風篇はたまらないラインナップ。花緑師匠のほかにも神田山陽、柳家喬太郎、林家彦いち、三遊亭歌武蔵という顔ぶれ。若手の人気者が勢ぞろいなのだった。大いに笑い、すこし泣く。夕刻、ジムへ。

 以上、私の「あるセブン・デイズ」でした。ちょっとブログ風でしたね。

 それでは、また来週。

 

 箭内道彦さんの代表的お仕事より。8年前の撮影。

Vol.16 「ジョン・レジェンド」

 観てまいりましたジョン・レジェンド。7日の土曜日にも日比谷野外音楽でピート・ロックたちと合同パフォーマンスを行ったそうですが、私が観たのは唯一の単独公演となった翌日8日のライブ。会場は渋谷duo MUSIC EXCHANGE。超満員でした。

 会場に着くと見覚えのあるドレッドヘア+サングラスの女性が私に向かって手を振っています…MISIAでした。会うのは実に久しぶり。きっと多忙だろうに、ちゃんと観に来てるなあ、と感心。入口で敬愛する音楽評論家の吉岡正晴さんに会い、そのまま合流して2階席へ。と、今度は満面笑顔のDJ OSSHYが。彼は数年前まで私がFM横浜で「SOUL SYSTEM」をやっていた時のプロデューサーでした(この話は一度書きましたよね)。

 さて。バンドは本人のボーカル+ピアノに加え、キーボード、ドラム、ギター、ベース、DJ、それに女性コーラスが2人いたかな。変則ビートを懸命に刻む白人ドラマーが何かと目立っていました。まあお世辞にも最高のバンド、最高の音響とは呼べませんでしたが、それでも最後まで飽きさせずに聴かせてくれたのは、ジョン・レジェンドの地肩の強さゆえ。もうそれに尽きます。実に力あるライブ・パフォーマンスでしたね。

 ライブの内容に関しては先述の吉岡さんの日記サイトのレポートに詳しいので、そちらをご参照くださいな。私が個人的にグッときたのは「Selfish」のジョン・レジェンド・バージョン!ご存じスラム・ビレッジが昨夏ヒットさせた名曲です。彼らのリリックは「全米美女巡礼」ともいうべき内容。曲の冒頭でテキサスに続いて登場する街がニューオーリンズなんですが、その頃私はこの曲を繰り返し聴きながらニューオーリンズを旅していたのでありました。旅情ってヤツですか。ま、ジョンさんバージョンではその辺のリリックは一切省略されていたんですけど。それだけにこの曲の元ネタとなったアリサ・フランクリンの「Call Me」まで先祖がえりしたかのような、いにしえのソウル・ミュージックの感触がありました。

 ジョンさんはベージュの細身スーツ(コットン素材かな)に白系のシャツで登場。センツァクラバッタ愛好家かしらん。私と一緒だね。2月のグラミー授賞式@LAで観た時も思いましたが、小柄です。それらに加え「よくアジア系と間違えられる」(本人談)顔立ちのせいもあり、全体の佇まいとしてはユナイテッドアローズのスタッフといっても通用する感じ。よく青山あたりを歩いてますよ、こういう子。彼の盟友のカニエ・ウェストもそうですが、R&B / ヒップホップ業界にもキレイめコンサバ系ファッションのアーティストが増えてきました。少なくとも私にとっては歓迎すべき傾向です!

 おっと、最後は服の話になっちゃいました。こりゃ失礼。

 それでは、また来週。

 

  

「Call Me」をめぐる物語。どれも大好き。

Vol.15「新人デビューとその周辺」

 今回は一応の目標としている水曜日に間に合わないどころか、金曜日の更新になってしまいました。楽しみにしてくださる方々、ごめんなさいね。

 ゴールデンウィークにもかかわらず、いや、だからこそ、なのか。私はあいも変わらずスタジオ作業三昧で、コラム執筆の時間確保も困難なほど。要するに今夏リリース予定の作品制作に追われているわけです。最近は新人アーティストのプロデュース依頼や作詞依頼(これは小山内舞立田野純のほうが多いかな)が圧倒的に多いですね。デモを聴かせていただくと、みなさんキラリと光るものがある。確かにある。すべてお受けしたいのですが、仕事には責任をもちたいですから、自分の許容量の範囲を超えるであろうと容易に想像できるものは泣く泣くお断りしてしまいます。

 そうやって仕事をお断りしたデビュー予備軍のその後は気になるものです。自分以外のプロデューサーたちが彼らの才能を開花させるのを傍観者として眺めるのは、正直ちょっぴり悔しい。それでも自分の認めた才能が世に広く認知されていくのは嬉しいものです。この仕事の何が辛いかといって、彼らが音楽業界から消えてしまうのを見届けるより辛いことはないのですから。

 一方、先頃BoAちゃんへの提供曲「Do The Motion」でオリコンチャート初登頂を果たした葛谷葉子さんのように、私のプロデュースが商業的成功に結びつかなかったアーティストが、その後作曲家として大成する例もあります。ちょっと前だと、私がプロデュースしたくてもプロジェクトの意向と合わずにそれが叶わなかった佐藤篤志くんが、EXILEのATSUSHIとして大成功を収めました。彼はその後さらに本人の趣向を強く反映した本格的ボーカル・グループCOLORもスタートさせています。こういう動きはほんとに頼もしいし、何よりも嬉しい。私のほうが勇気づけられます。

 なんて、今回は音楽プロデューサーとしての偽らざる心情を語ってみました。

 さて、東方神起の日本語デビューシングル「Stay With Me Tonight」はもうお買い求めいただいたでしょうか。関係者の予想を大きく上回る反応をいただき、全国各地でCD+DVDが軒並みソールドアウトです。プロデューサーとしてはこれもまた嬉しいやら悔しいやら。知人からも「渋谷H●Vに買いに行ったら現物が売り切れていた!」とか「渋谷のTSU●AYAも在庫切れだ!」等のブーイングが相次いで寄せられています。予想を大きく上回るリアクションに加え、連休中という事情が重なり補充が遅れたようです。その後CD+DVD工場がフル稼働してようやく全国的に商品も補充できた模様。未入手の方は今すぐ是非!R&Bファンにはカップリング曲の「Try My Love」(和田昌哉さん共作曲)がご好評いただいているようですな。

 それでは、また来週。

 

 
葛谷葉子。私は今でもよく聴きます。
左、座って聴く『MUSIC GREETINGS VOLUME ONE』(1999)
右、立って聴く『MUSIC GREETINGS VOLUME TWO』(2001)

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