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2005-06

Vol.22「過去原稿再録:『学食巡礼』早稲田大学(本部キャンパス)編」

 学食は社会の縮図だと人は言う。食文化は民族文化の最たるものだとも言う。ならば学生食堂、所謂「学食」は未来の青写真か。

 大学生の学食離れが語られている。’00年11月16日の朝日新聞夕刊が伝えるところによると、大正時代に開業した立教大学の第一食堂の利用者は15年前に比べて3分の1以下にまで減っている。全国大学生活協同組合連合組合によれば、学食離れは全国的な現象らしい。

 その理由として挙げられるのは、混雑を嫌う現代若者気質や、携帯電話代捻出のための外食費削除などである。これはゆゆしき問題だ。かくなる理由で学食を避ける学生たちとわれわれは未来を共生していけるのか。そんな危惧が私を学食巡りへと駆りたてた。

 隗より始めよ。まず向かったのは母校早稲田大学の「大隈ガーデンハウスカフェテリア」である。約10年前に鳴り物入りで登場した学食色希薄な学食。完成当時、私は年かさのいった勤労学生だったが、利用キャンパスが違ったせいもあり実態をよく知らない。卒業後所用で大学に行った際に一度だけ利用しようとした記憶があるが、満員ゆえ入るのはあきらめた。

 訪れたのはある平日の午後1時すぎ。確か1000人ほど収容可能なはずだが、利用者はその半分にも満たない。これ、学食じゃなきゃとっくにつぶれてるよ。いや、学食でも大丈夫か。心配せずにはいられない。ある程度の予想と覚悟はしていたのだが、実際にその様子を目の当たりにすると寂寥の感は禁じえない。その直前に近くのコンビニに学生が溢れていたのを見たのもその気分を後押しする。

 カフェテリア2階と3階の吹き抜け状ツーフロアからなる。後輩より名物と聞きし大隈ランチ480円也を注文、2階席につく。野郎どもが雑誌に興じるさまは昔日の光景そのもの。身を投げ出すようにして惰眠をむさぼる学生の姿も昔のままだ。ただその数があまりに少ないのが異なる点だ。

 大隈ランチのボリュームは圧倒的だ。カレーライスにコロッケ、ハンバーグが大きな一皿に盛られている。まあハンバーグといってもイシイ的なヤツですが。それでも30代の腹には収まらず、7割がた食べたところであとは残した。

 食器返却口までトレイを運んだところで「私も一言カード」掲示板に目がとまる。そこは「3階の女性従業員のマニキュアのせいで食欲がなくなった」だの「松屋が通常400円を290円に値引きしてるこのご時世において、依然400円台で牛丼を販売するこのカフェテリアの姿勢を問う!」だの学生の言いたい放題の場と化していた。よく言えば反骨精神の発露、悪く言えばただの悪態三昧。

 昼間からテーブルで眠りこけといて、何をエラそうに。湧きあがる怒りを持てあましながら学食スタッフの回答欄に目を進める。そこには「厳重に注意します」「努力はしますが牛丼専門店ではありませんので」といった誠実かつクールな文章が淡々と綴られていた。

*今週は松尾潔多忙につき、書き下ろしコラムはお休みし、過去の原稿を再録いたしました。
 松尾潔著『学食巡礼』(扶桑社・2002年)より。
 初出は『週刊SPA!』2000年12月6日号。同名連載コラムの第1回でした。


いまだに「読んでますよ『SPA!』の学食連載!」と言われます。
連載終了後に単行本化されて、もう丸3年経ったんですが。
ま、今読んだほうが面白いかも、と言っておきますけどね。

Vol.21「あるセブン・デイズ~その2~」

 今回もまた更新が遅れてしまいました。シーマセン。毎週水曜日「頃」更新、と銘打っているのでひとつ大目に見ていただきたいですな。

 秘書には「いっそのこと金曜日更新と言い切ったらどうでしょう」と提案されたのですが、自分の性格上、いったんそう言っちゃうとリアル更新日は月曜あたりになってしまうような気がします。ん? ってことは、月曜日更新と言っちゃえば水曜日にはアップできるかな。そりゃ意味ないか。一週分消えちゃうな。

 結論。自分に甘いねえ、私は。

6月5日(日) 
 午前、東方神起のPV撮影に出かけたスタッフに電話を入れ、諸々の進行状況を確認。撮影順調なり、と。真昼、とスタジオ作業。日本では初お披露目となる彼の自作曲「Play Another One」をレコーディング。この曲は、最近進境著しい23歳のトラックメイカーの福山泰史(ふくやま・たいし)さんがKの歌声をイメージして作ったトラックにKがまず仮メロディーをのせ、それを受けた福山さんがメロディーを再構成、最後に私が概観して女性コーラスパートの場所や譜割り等を考えるという手順をとった。そりゃもうファンキーでしたよKくん。これまでファンの方がたが抱いているであろうイメージを心地よく裏切る歌いっぷり。まだまだ開けていない引き出しが沢山あることを痛感。

6月6日(月) 
 真昼、前日に引き続きKとスタジオ作業。彼がライブで好んで歌っているビル・ウィザーズの”Just the Two of Us”のカバー・バージョンをレコーディング。先週すでに録り終えていた彼のピアノ・パートもよかったが、ボーカルのレコーディングになるとやはりノリノリですなKくんは。午後、いったん中座し、某ベテラン・シンガーの新作について打ち合わせ。某大御所作曲家との久々のコラボレーションのプロデュースのオファーを受け、身が引き締まる思い。夕刻、原宿ブルー・ジェイ・ウェイにてアイボリーブラザーズのライブ鑑賞。終演後、楽屋裏でメンバーと談笑。久しぶりだったので1時間ほど話し込んでしまう。その後Kの待つスタジオへ戻る。

6月7日(火) 
 真昼、エイベックス本社にて東方神起と打ち合わせ。数週間にわたって続いたセカンドシングルのレコーディング最終日を翌日に控え、その心構えと今後について話す。数十分の予定が熱あまって1時間ほどオーバー。最後はメンバーとひとりずつハグして決意を確認する。その後、Kの新曲「Girlfriend」のトラックダウン(TD)。エンジニアはこの数年私が最も多くお仕事している川本ゴン太氏。進行を確認して場所を移し、原宿BJガールズの会議。メンバーの豊かな個性を伸ばすためにソロワークスを試みてはどうか、という話。まだインディーズというステージで活動しているため、私のイマジネーションのベクトルも自然と奔放の度合いを増す。ま、遠くない将来にメジャーデビューを狙ってはいるのだが。夕刻、秘書を伴って某和食屋へ。薬師丸ひろ子さんと会食。誕生日を2日後に控えた薬師丸さんとケーキを。彼女とは映画『レイクサイド・マーダーケース』でご一緒して以来のお付き合い。食、クルマ、映画…大いに語りあう。名残惜しけれど、TDの具合を確認するべくスタジオに戻る。と、そこへ深夜の珍客。山下達郎氏が私を訪ねてふらりとスタジオへいらっしゃったのだった。Kくんをご紹介した後、達郎さんもまじえてTD済み音源をチェック。今回も万全のゴン太さんクオリティ!その後はアレンジを手がけたMaestro-T、レコーディングディレクター二宮英樹の各氏もまじえての、実に楽しい音楽談義となった。よき夜。

6月8日(水) 
 午前より新人歌手minkのレコーディング作業。アレンジはMaestro-T、ギターに石成正人、トランペットに佐々木史郎の各氏、コーラスにAsato嬢。加えてブレンダ・ヴォーン女史も。いったん中座して某美形女性シンガーの新曲のアレンジ打ち合わせ。田中直さんと。先述の福山泰史さんと同じ23歳!彼もまた大きな才能の主です。その後、別スタジオで東方神起の超絶美メロ「言葉はいらない」レコーディング。今回はこれまでリードボーカルの出番に乏しかったユチョン(ミッキー)を最前線に抜擢した。これが大成功。東方神起との付き合いを深めていくにつれて、彼がなぜ本国韓国で破格の大人気を得ているのかがよく理解できるようになった。たたずまいやちょっとした所作のひとつひとつに、これまで彼が韓国や長い米国生活で見てきた景色が投影されるのだ。この日のユチョンはシャウト一発で恋愛の高揚と感傷を表現してくれた。青春の時をとうに過ぎてしまった私も聴いていて胸がヒリヒリ痛む。最高だ。よくやってくれたねミッキー。レコーディング終了後はスタジオにあるグランドピアノを囲んでユチョンやジェジュン(ヒーロー)の自作曲発表大会となる。夜、スーパーエンジニアD.O.I.氏主宰のダイモニオン・スタジオへ。Kや福山さんと合流。「Play Another One」のTD。いつもながらに完璧。歓談は深夜にまでおよぶ。

6月9日(木) 
 真昼、東方神起のスタッフ・ミーティング。次にレコーディングする曲について。午後からはこのところ木曜日の恒例となっている趣味の時間。夕刻よりジム。

6月10日(金)
 
 真昼、ソニースタジオにてKのシングル「Girlfriend」のマスタリング。エンジニアはかねてより懇意にしている茅根裕司氏。万全。終了後、アイボリーブラザーズのスタッフ・ミーティング。すべてが終わった21時、留守電覚悟で茅根さんのスタジオに電話を入れると、彼は週末の整頓作業でまだスタジオにいた! ならば呑むしかないでしょ。早速合流、いったん私の車で自宅まで。その後、某和食屋に場所を移し暴食痛飲。シャルドネの後の夏茗荷のお味噌汁。いや最高ですな。

6月11日(土)
 
 早朝よりデスクワークを午後まで。いったん仮眠後、ジムへ。再びデスクワーク。夜、東方神起「Somebody To Love」のアカペラ・バージョンのTD確認。エンジニアは荻野晋平氏。今回はO.G.Y.名義での参加となった。彼もまた若き大いなる才能の主である。タイチマスターの新作での仕事にも注目!その安定したスキルはとても20代には見えないが。美少年の残影がかろうじてその実年齢を語る。

 それでは、また来週。

Vol.20「ふたたび近況など」

 またまた更新が遅れてしまいました。ゴメンナサイ。更新が滞るたびに「お忙しいのですか?」という内容のメールが多数届きます。ありがたいやら、申し訳ないやら。

 今週は上半期の仕事のヤマ場を迎えておりまして、7月13日発売の東方神起のセカンド・シングル「Somebody To Love」の全レコーディング、7月27日発売のKのサード・シングル「Girlfriend」の全ミキシングが無事に終了いたしました。全員が10代の東方神起は初めての日本語タイトルの曲「言葉はいらない」に、また21歳のKは初めての自作曲「Play Another One」に挑戦しました。挑む心。屈せぬ心。若い彼らの勇気をまぶしく見つめる毎日です。それにしてもR&Bボーカルのレベルが高いな韓国は。

 先週土曜日に東方神起のユチョン(ミッキー)19歳の誕生日を迎えました。その日をスタジオで迎えた私たちは、作業をいったん中断してケーキを囲んでお祝いをしました。その時に最も強く感じたのは「ああ、昨日まで18歳だったんだ」という驚き。こうして文字にすると何ともマヌケな感想ですが、それほど濃厚な日々を過ごしていると思いますよ彼らは。

 その一方で、最近、キャリア20年を優に超す某男性アーティストのアルバム制作をお手伝いしてもいます。こちらもまぶしい。結局”the young”であることそれ自体よりも”the young at heart”という心の有り様にこそ意味があるのでしょう。

 さて、このところ制作日誌っぽくなっているこのコラムですが、以下、ちょいと海外のR&Bのお話を。というのも、呑み歩きの時間が確保できない最近のタイトなスケジュールゆえ、深夜や明け方に自宅でひとりお酒を呑みながら聴く音楽がかけがえのない楽しみになっているのです。

 最近の愛聴盤はモータウンの男性シンガーKEMの2枚目のアルバム『ALBUM II』と、マーカス・バレンタインの『Valentine’s Day』。前者は昨年ニューオーリンズで観て以来楽しみにしていた新譜です。いにしえのKC&ザ・サンシャイン・バンドの名曲”I Get Lifted”の新解釈が聴きもの。後者はアイルランドのダブリンを本拠とする男性シンガーによる手作りのソウル・ミュージック。夜に沁みます。もし興味のある方はマーカスさんのHPを覗いてみてください。自らのペンによるバイオグラフィーが読める他、『Valentine’s Day』にも収録されている”More 2 Life”のビデオをフルレングスで観ることができます。ダブリンとおぼしき街中でマーカスさんがえんえんと踊り続けるのですが、このダンスがちっともカッコよくないんだな。マヌケ美を好むR&B愛好者にはたまらない、もうたまらない。

 それでは、また来週。

 

 
マーカスさん、たぶん本物のアポロには行ったことないのでは…。

Vol.19「近況など」

 空気に含まれる湿り気がこの季節ならでは。もうすぐ梅雨ってことでしょうか。
 更新が遅れました。毎週水曜日を楽しみにしていただいている方々、ごめんなさい!

 このところプロデュースのお仕事が多忙を極めておりまして。理由は明白です。これまで基本的に私のプロデュースはアルバム・プロデュースを意味していたのですが、昨今の音楽をとりまく環境の変化を考え、最近では曲単位のお仕事も受けるようになったので、手がけるアーティストの数が一挙に増えたんですね。現在、7組のアーティストのプロデュースに加えてUS R&Bのコンピレーションの企画・監修を進めています。どれも納得してお受けしたプロジェクトばかりなので楽しくやっていますよ。

 その中でいま制作佳境なのが、東方神起の2ndシングルとKの3rdシングル。東方神起のジュンス(シア)とKは同じ高校出身なんですよ。もちろんジュンスが後輩ですけど。才能の生まれる場所、というのは確かにあるんでしょうねえ。

 曲にあわせていくつかのスタジオを転々と渡り歩く毎日が続きますが、そんな時間の中で思いがけない出会いもあります。昨日は某スタジオでSkoop On SomebodySoweluにバッタリ。いずれも以前に私がプロデュースを手がけたアーティストですが、プライベートでもよく会っているSOSはともかく、Soweluは実に久しぶり。初めて会ったのは彼女が高校卒業後間もない頃で、まだどこかあどけなさも残る美少女という感じでした。そんなSoweluも今では「さん」付けが似合うお年頃。「昔から美人顔だとは思っていたけど、スリムになってホントの美人になったね!」と冷やかすと、「ウフフ」と妖艶な笑みを。「こういう時は少しは照れるもんだろ!」とツッコミを入れたら、あわてて照れ笑いしてましたSoweluさん。

 スタジオ以外では、ラジオのゲスト出演をポツポツと。それらは本HPのWhat’s Newで随時ご紹介していきますので、どうかご確認のほどを。

 それでは、また来週。

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