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2005-06-23

Vol.22「過去原稿再録:『学食巡礼』早稲田大学(本部キャンパス)編」

 学食は社会の縮図だと人は言う。食文化は民族文化の最たるものだとも言う。ならば学生食堂、所謂「学食」は未来の青写真か。

 大学生の学食離れが語られている。’00年11月16日の朝日新聞夕刊が伝えるところによると、大正時代に開業した立教大学の第一食堂の利用者は15年前に比べて3分の1以下にまで減っている。全国大学生活協同組合連合組合によれば、学食離れは全国的な現象らしい。

 その理由として挙げられるのは、混雑を嫌う現代若者気質や、携帯電話代捻出のための外食費削除などである。これはゆゆしき問題だ。かくなる理由で学食を避ける学生たちとわれわれは未来を共生していけるのか。そんな危惧が私を学食巡りへと駆りたてた。

 隗より始めよ。まず向かったのは母校早稲田大学の「大隈ガーデンハウスカフェテリア」である。約10年前に鳴り物入りで登場した学食色希薄な学食。完成当時、私は年かさのいった勤労学生だったが、利用キャンパスが違ったせいもあり実態をよく知らない。卒業後所用で大学に行った際に一度だけ利用しようとした記憶があるが、満員ゆえ入るのはあきらめた。

 訪れたのはある平日の午後1時すぎ。確か1000人ほど収容可能なはずだが、利用者はその半分にも満たない。これ、学食じゃなきゃとっくにつぶれてるよ。いや、学食でも大丈夫か。心配せずにはいられない。ある程度の予想と覚悟はしていたのだが、実際にその様子を目の当たりにすると寂寥の感は禁じえない。その直前に近くのコンビニに学生が溢れていたのを見たのもその気分を後押しする。

 カフェテリア2階と3階の吹き抜け状ツーフロアからなる。後輩より名物と聞きし大隈ランチ480円也を注文、2階席につく。野郎どもが雑誌に興じるさまは昔日の光景そのもの。身を投げ出すようにして惰眠をむさぼる学生の姿も昔のままだ。ただその数があまりに少ないのが異なる点だ。

 大隈ランチのボリュームは圧倒的だ。カレーライスにコロッケ、ハンバーグが大きな一皿に盛られている。まあハンバーグといってもイシイ的なヤツですが。それでも30代の腹には収まらず、7割がた食べたところであとは残した。

 食器返却口までトレイを運んだところで「私も一言カード」掲示板に目がとまる。そこは「3階の女性従業員のマニキュアのせいで食欲がなくなった」だの「松屋が通常400円を290円に値引きしてるこのご時世において、依然400円台で牛丼を販売するこのカフェテリアの姿勢を問う!」だの学生の言いたい放題の場と化していた。よく言えば反骨精神の発露、悪く言えばただの悪態三昧。

 昼間からテーブルで眠りこけといて、何をエラそうに。湧きあがる怒りを持てあましながら学食スタッフの回答欄に目を進める。そこには「厳重に注意します」「努力はしますが牛丼専門店ではありませんので」といった誠実かつクールな文章が淡々と綴られていた。

*今週は松尾潔多忙につき、書き下ろしコラムはお休みし、過去の原稿を再録いたしました。
 松尾潔著『学食巡礼』(扶桑社・2002年)より。
 初出は『週刊SPA!』2000年12月6日号。同名連載コラムの第1回でした。


いまだに「読んでますよ『SPA!』の学食連載!」と言われます。
連載終了後に単行本化されて、もう丸3年経ったんですが。
ま、今読んだほうが面白いかも、と言っておきますけどね。

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