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2006

Vol.61「近況とお知らせ」

 ちょうどひと月のご無沙汰でした。みなさん、お元気ですか?くんのセカンド・アルバム『Music in My Life』も無事リリースされ、ようやくひと安心…する暇もなく、激しく働いている年末の今日この頃であります。

 以下、近況とお知らせを、端的に。

 いまジョニー・ギルブルーノート東京で公演中です。私の周囲、とりわけ30代後半から40代のソウル愛好者の間ではこの話題でもちきり。首都圏在住の皆さん!まだ間に合いますよ。公演は来週月曜25日まで。私の鑑賞記は公演終了後に掲載しますね。

 問題プログラム、J-WAVE『The Universe』の本年最終回(25日27時~29時)は、山下達郎さんをゲストにお迎えしての歳末放談。2時間たっぷりとディープな選曲とユルいおしゃべりをお楽しみくださいな。学生さんも社会人さんも、今は「いつもは聴けないけど今なら聴ける」時期だったりします?ちなみに年明けの放送は元日27時から。

 そんな達郎さんの「クリスマス・イブ」をオープニングテーマにしたテレビ番組があります。この時期の日本テレビ系の看板プログラムになりつつある『HAPPY Xmas SHOW!』(24日21時~22時54分)。豪華な出演者の顔ぶれは特設ページを確認していただきましょう。今年は初めて私も番組に関わらせていただきました。鈴木雅之さん、Skoop On Somebody、そしてもうひとり意外な女性アーティストが共演するコーナーの音楽プロデュースです。地上波デジタルの音声特性を最大限活かした作りになっていますので、できれば5.1チャンネルでお楽しみいただけると嬉しいです。あと、この番組のテーマソングで初披露となる竹内まりやさんの新曲「クリスマスは一緒に」が最高ですよ。達郎さんの「あまく危険な香り」が好きな人にはたまらないかも。

 さて、今週から全国TBS系で始まったドラマ『結婚式へ行こう!』(月~金 13時~13時半)の主題歌「ふたりでいいじゃない」のプロデュースを手がけました。鈴木雅之さんと島谷ひとみさんのデュエット新定番(希望)。島谷さんは今年の夏に仲間由紀恵さんから紹介してもらいました。久保田利伸さんのコンサートの楽屋でした。私がずっとお仕事してみたかった女性なので今回の再会は嬉しいかぎり。予想を上回る歌のうまさに感激しました。言うまでもなく、美しい人ですしね。

 歌詞はまず私が書いたデモ詞をもとに、人気脚本家の秦建日子さんと二人でスタジオにプチ缶詰め状態でフィニッシング・タッチを入れました。同世代の秦さんとの共同作業は実に楽しかったな。互いの恋愛観、女性観を吐露しあったりして。作編曲はゴスペラーズのファミリー的存在の宇佐美秀文さん。来年1月24日にリリースされます。

 それでは、また次回。よいクリスマスを!

 


Johnny Gill『Johnny Gill』(1983)
66年生まれのジョニーが16歳で吹き込んだデビュー・アルバム。
ライブじゃ1曲も演ってくれませんでしたが。

Vol.60「5周年」

 最近の朝晩は寒うございますなぁ…と、今回は博多の商人風に言ってみました。

 先週、実に久しぶりにコラムを更新したところ、結構な数の反応をいただきました。ブログ全盛の昨今、時代の流れに逆行するオールドファッションドな形式の当コラム。何しろ更新分にたどり着くまで3回くらいクリックしなければならないわけで。ま、その「振り分け」が私の狙いなんですけど。このホームページを会員制とか課金制にするつもりは毛頭ありませんが、浮動票的読者を求めていないことも事実なので。そんな臍曲がりなスタンスをご理解してくださる方がたが少なくないというのは嬉しいことであり、また励みにもなりますね。いやあ、世界は広いや。狭いや。

 本日、CHEMISTRYの初めてのベスト・アルバム『ALL THE BEST』が発売されます。「PIECES OF A DREAM」で2001年春にデビューした彼らにとって今年は5周年。関連のイベントやキャンペーンがずっと展開されてきたわけですが、『ALL THE BEST』こそはそのクライマックス。商品の詳細についてはWHAT’S NEWにお目通し願うとして、このリリースは私にとって何とも感慨深い出来事となりました。

 というのも、2003年6月リリースのサマー・プレミアム・アルバム『Between the Lines』を最後に彼らの仕事から離れて久しい私が、このアルバムで実に3年半ぶりにプロデュースに復帰したからです。その曲「Top of the World」は既発シングル集という位置づけの『ALL THE BEST』にあって唯一の未発表曲として収録されています。制作中は彼らとの仕事でしか得られない感触に身震いを覚えました。これは是非聴いていただきたいなあ。私にとってのこの5年間は「ケミストリーの」という枕詞を冠して語られる日々でもありましたから。それが嫌だったとは言わないけれども、なかなか素直に受けとめられない自分もいました。

 話かわって。真夏の密室でクリスマスソングを作ることが普通とされる音楽制作業ではありますが、この時期になると雑誌への寄稿や放送番組の収録も超先行ペースが求められ、そのことに若干の戸惑いも覚えます。もともとライター業やラジオの仕事のほうが長いのに、この慣習にはずっと慣れません。これはもう気質の問題なので仕方ない。だから自然と音楽制作の比重が増えていったのかしら。J-WAVE『The Universe』もその点が歯痒くて。収録時点での自分の情報量と感性に従順なおしゃべりが、オンエア時には若干の温度差を生んでしまうのは否めません。賢明なるリスナー諸氏諸嬢におかれましてはその点ご考慮いただければ幸いナリ。

 それでは、また次回。

 


CHEMISTRY『ALL THE BEST』
ファンの皆さんの5年間のご支援に感謝。
そして、川畑くん、堂珍くん、おめでとう。やったね!

Vol.59 「いろいろあるよ、いろいろね」

 ほぼ2ヶ月ぶりのご無沙汰です。さすがにこれがロンゲスト・ヤード、じゃなかったロンゲスト・インターバルですね。失礼しました。少し思うところあって執筆をお休みしていました。その間の仕事状況については弊社秘書がお知らせしている通りですが、まあ激しく働いてはいます。あ、そういえば今日はJUNEくんのデビュー日です。どうかひとつよろしく。この子の才能、凄いですから。

 確か前回のコラムでは8月のヨーロッパ周遊のご報告を予告していたのですが、これは機会を逸しましたね、さすがに。実は9月にもニューヨークを旅していました。で、悲願の生バーブラ・ストライザンド体験を果たしました。マディソン・スクエア・ガーデンでのコンサート。隣席はキッスジーン・シモンズ翁でした。ま、余談です。当地では『ジャージー・ボーイズ』等の人気ミュージカルも観賞。遅ればせながらの『ヘアスプレー』にはあら懐かしやテビン・キャンベルの姿が。 

 ま、こういった諸々は先月から始めたJ-WAVE『The Universe』でお話していることですが。カバーしていないエリアの方々、ごめんなさいね。ま、東京でも聴いてる方はそんなにいない番組ですけど。午前3時から5時までの解放区。じゃないとレギュラー番組なんて受けませんって。今のラジオを取り巻く状況には要らぬ規制が多すぎる。『The Universe』は存在自体が奇跡ですな。

 今日久しぶりにペンを執ったのは、私にとって大切なシンガーがまたひとり世を去ったから。ジェラルド・リバートが11月10日にオハイオ州クリーブランドの自宅で息を引き取りました。40歳。死因は心臓発作です。彼は1966年7月13日生まれ。日本的な尺度でいえばR&Bスクールの私の一学年先輩。そういえば彼のレパートリーに”School Me”という曲がありました。ジェラルドの父親はオージェイズのエディ・リバートですが、64歳の彼はまだ元気なのに。そういえばジェラルドはルーサー・バンドロスパティ・ラベルと仲が良いことでも有名でした。62歳のパティは昨年のルーサーに続き今年はジェラルドという年少の友人の葬儀でもレクイエムを歌うことになってしまいました。

 このコラムの読者の皆さんならご存じの方も多いかと思いますが、グループLEVERT名義、ソロ名義、またキース・スウェットとジョニー・ギルとのユニットLSG名義、そのすべての日本盤ライナーノーツの執筆を私は手がけています。特に活動初期は。20代だった私は、彼について認知が十分でなかった当時の日本のレコード会社ご担当を相手に何度も熱弁をふるったものです。結果、日本盤発売や電話インタビューも実現しましたが、それでも彼の名前が日本で浸透することはなかった。悔やまれます。12月に来日するジョニー・ギルはステージで何を語ってくれるでしょうか。

 さて、今回のコラムのタイトルは90年代初頭に何度目かのブームを起こした植木等さんのコンサート名です。今になってその言葉が沁みるなあ。これ、放送作家の河野洋さん作のはず。河野さんといえば私にゴルフを教えてくれた方です。韮山の別荘に泊めていただいて。その後、続けてませんが。シーマセン。ところで当時創刊間もない『東京ウォーカー』で植木さんのインタビュー記事を書いた記憶があるのですが。その掲載号をお持ちの方いらっしゃいませんか。どうかご一報を。謝礼差し上げます。

 それでは、また次回。

 


Gerald Levert & Eddie Levert Sr.『Father & Son』
これが一番のお気に入りというわけでもないのですが。
あちら側に行っても大好きなお父さんの写真があれば寂しくなかろうと。

Vol.58「今週いっぱい」

 ずいぶんとゴブサタしちゃってゴメンナサイ。秘書のコメントにもあるように、猛烈に働いております。ここ数年で一番の仕事量かもしれません。それも濃密な。秋以降の作品リリースにご期待ください!

 さて今日はみなさんに急ぎのお知らせがあってペンを執りました。
 いま有楽町のコットンクラブケニー・ラティモア&シャンテ・ムーア夫妻が公演中です(9月24日まで)。私は火曜日二部に行ってきたのですが、これがもう最高のソウル・ショウで。私はコットンクラブのめぼしいライブは結構観ていますが、間違いなくこれまでのベストのショウでした。それも突出したレベルで、ベスト。
 それなのに。空席が目立ちました。これは、悲しい。しかもよりによって最前列中央の男性客はずーっと居眠りしてましたよ。あれ、不快でした。
 心あるソウル・ミュージック・ラバーたちよ!今夜にでも行くべし!観るべし! 

 以下、余話として。
 実は数年前にもこの夫婦デュオの素晴らしいライブを海外某所で観ているのです。しかし現在の円熟味はその時の良い記憶を凌駕するもの。ですから私にはデュオの成育過程を見ているような面白さがありました。
 ケニー・ラティモアはデビュー直後にNYのビレッジ地区某所で行ったライブを観て以来、もう4回目くらいかな。現在が最高と断言しましょう。そうそう、今思い出しましたけど、8、9年前にニューオーリンズのホテルで偶然居合わせて歓談したことがありました。マネキンというグループでデビューするためにワシントンD.C.のハワード大学(ダニー・ハサウェイやロバータ・フラック、P・ディディ等を輩出した名門黒人大学)を中退したことを悔やんでましたっけ。でも最近になって同大から学士号を授与されたとか。アメリカらしい話ではあります。
 シャンテ・ムーアを観るのは3回目ですが、彼女はもう、毎回安定して素晴らしい。「Straight Up」(今年韓国のイ・ヒョリがカバーしましたナ)を出した頃に、私のラジオ番組に遊びに来ましたが、その時も淡々と、しかし笑顔を絶やさずにオトナのおしゃべりを聞かせてくれました。確か私と同い年なんですよ、シャンテ(本人発音だと、シャンテイ)。素でしゃべって楽しかったという意味では、エイドリアナ・エバンズ、ミキ・ハワードそしてシャンテイ・サベージと過ごした時間と同じくらい良い印象があります。

 8月の渡欧時のご報告は次回以降に。予告としてはロンドンで観たマイケル・ジャクソン楽曲全面使用ミュージカル『Thriller』、アレクサンダー・オニールとの8年ぶりの再会、ノッティングヒル・カーニバル、初めての『エルブリ』訪問、などなど。

 それでは、また次回。

 


Kenny Lattimore & Chante Moore『Uncovered/Covered』
デュオ2作目は2枚組!日本盤は11月8日発売。

Vol.57「過去原稿再録:『25ans』(2001年8月号)CULTURE SUPPLEMENTSより」

 海外旅行シーズンですね。僕も仕事柄、海外へ行くことが多いのですが、迷いがちなのが自分のための旅みやげです。友人や知人へのみやげはそこまで迷わないのですが、「マイみやげ」となると目的が違うので。何度旅しても、いや何度も同じ場所を訪ねるからこそ、その都度そこで自分が呼吸していた証が欲しいものです。いわば、日記がわりの旅みやげ。最近僕のマイみやげの定番は、ご当地で編まれたコンピレーションCDです。コンピレーションとは複数のアーティストの作品がひとつのパッケージに収められた商品のことで、日本でも最近はヒーリング系のコンピレーション・アルバムが大きなセールスを挙げていますね。

 コンピレーション先進国といえばイギリス。大型CDショップでは入口そばで大きなスペースをとって販売されていて、特にダンス~R&B系アルバムの充実ぶりには目を見張るものがあります。まめにアップデイトされるウェブサイトのように、日本では考えられない短いインターバルで新作が次々にリリースされるのです。僕もロンドン出張の際、いつもクラブに遊びに行く時間が確保できるわけではないので、仕事の合間に買ったコンピレーション最新盤を聴きながら早朝の街を散策したり、ホテルのバスルームで寛ぐのが楽しみのひとつになっています。

 イギリスでコンピレーション市場が活況を呈しているのには理由があります。アーティストの所属レーベル(レコード会社)の枠をなかなか超えられない日本と違って、かの国ではレーベル間での音源の貸し出しも立派なビジネスとみなされているのです。シングルCD市場が成熟している日本では、リリースされたばかりのシングルがコンピレーション、ましてや他社のアルバムに収録されることなどまずあり得ませんが、「シングルはプロモーションツール、ビジネスはアルバムで」という発想が強いイギリスではこれが成立してしまうというわけです。

 まあ仕組みはともかく、短い滞在を強いられるツーリストにとって、手早く旅先の音のトレンドを押さえられるのは嬉しいかぎり。ジャケットもお洒落、値段もお手頃ですし。それぞれ2枚組ですが、いずれも市場価格は3千円程度でした。今東京で聴いても滞在時の空気が甦ってきます。トレンドに敏感なあなたにも、格好のマイみやげとなるでしょう。共に日本でも大型輸入盤店で入手できます。ご参考までに。

※ 今週は松尾潔多忙につき、書き下ろしコラムはお休みし、過去の原稿を再録いたしました。

 
左『Twice as Nice』
人気DJふたりによる2枚組コンピレーション。2ステップなどの新しいムーヴメントを生み出している、最新盤のUKガラージシーンも把握できる(輸入盤)
右『THE LICK PRESENTED BY TREVOR NELSON』
イギリスのブラック・ミュージック・シーン最重要人物のひとり、トレバー・ネルソンのひと味違うセレクション(輸入盤)

Vol.56「過去原稿再録:『ef』(2002年9月号)松尾潔的音楽旅日記より」

 7月、銀座の昼下がり。雨やどりのために立ち寄ったCDショップで『EL GUSTO ES NUESTRO』なるライブ盤に出会いました。このジャケットの顔ぶれには見覚えがあります。そう、あれは今から6年も昔、8月のことでした・・・・・・。

 その夏、僕は初めてのロンドン出張を前に気分が萎えていました。アメリカ黒人文化の信奉者だったがゆえに、渡米歴は数十回ながらヨーロッパの地を踏んだ経験は一度もなかったのです。ところが、いざ着いてみればロンドンの街は最高で。銃の所有が堅く禁じられていることが、これほどまでに旅行者をストレスから解き放ってくれるとは。この感覚は合衆国文化への懐疑心を生み出したと同時に、生来の放浪癖に火をつけました。どこかヨーロッパのビーチへ。そんな思いに囚われてしまったのです。

 1週間ほどのロンドン滞在予定も残すところあと1日となった朝、旅行代理店が軒を並べるボンド・ストリートへと出向きました。ロンドン発の安価なパッケージツアーを探すために。予備知識はありません。ただ明るい店構えを選んで入りました。

 中にはいかにも『ミスター・ビーン』に出てきそうな飾り気のない中年女性がひとり。神戸牛を思わせる堂々たる体躯はあくまでパソコンに向けたまま、こちらに職業的な笑顔を投げかけます。僕は安堵を覚え、カウンターの椅子に腰を下ろしました。安くて近いリゾートで、明日出発、1週間のパックはあります?この後会議があるので10分間で支払いまで済ませたいんだけど。僕のそんな性急な申し出に彼女は微苦笑を返し、これまた職業的な訓練を感じさせる素早い手つきでキーを打ちます。

 「あなたにぴったりの場所があるわ」そう言って教えてくれた場所はアルガルヴェ。単にABC順で筆頭なのでしょうが、寡聞の僕でさえ知っているポルトガルのリゾートです。いいなあ、それ…と言いかけた僕を彼女が遮ります。「あらごめんなさい。もう締め切ってるわ」

 じゃあ他は?もうどこでもいいんだから。そう急かす僕には一瞥もくれず、彼女が次に選んだのはアリカンテ。聞き慣れぬ地名です。なるほど、アルファベット順で2番目、なのでしょう。

 「ここならひとり分だけ空いているわ。出発は明日の朝5時半だけど、大丈夫?」もちろん。かくして僕は在店時間計7分で旅行クーポンを購入、店を後にしたのでした。

 翌日。空港に着陸した驚いたことには、ポルトガルと思い込んでいたアリカンテはスペインの都市なのでした。無知と先入観とのコラボレーションは見事功を奏したわけです。前夜ソーホーのディスカウント書店で買った分厚く重い英葡・葡英辞典は、1ページも開かれることなく空港のゴミ箱へと直行しました。

 バレンシア地方第2の都市であるアリカンテ。ラ・コスタ・ブランカ(白い海岸)と呼ばれるこのエリアは、優雅なリゾートとはとても呼べない下世話な観光地でした。トップレスのヨーロッパ女性も毎日目の当たりにすると眼福の意味を失います。浮き足立った気分が落ち着きに変わり、ようやく冷静を取り戻した頃にはロンドンへもどる時が来てしまいました。ついにアジア系の観光客に邂逅せぬま1週間は過ぎました。

 ある夜、地元の闘牛場に人が連なっていました。どうやら観光客ではなく地元の住民が大半を占めている模様。これが夜の闘牛見物かと。列にまぎれて当日券を入手し、何とか入場することができました。はたして、僕が闘牛と思っていたそのイベントは、スペインを代表する女性シンガー、アナ・ベレンと彼女を慕う男性シンガー3人のジョイントコンサートでした。

 冒頭でふれたアルバムは、そのツアーの実況録音盤です。もっとも、6年前の僕には、2002年の銀座であの顔ぶれに再会できるなんてとても想像できませんでしたが。CDになった音を聴き、今になってあの場所に流れていた時間が豊かなものであったことを強く感じるのです。

※ 今週は松尾潔多忙につき、書き下ろしコラムはお休みし、過去の原稿を再録いたしました。

 


女性シンガー、アナ・ベレンを中心としたスペインの人気歌手4名が’96年の8月から9月にかけて行ったジョイント・ツアーのライブ盤。豊かな声、成熟した色気を堪能。

Vol.55「左平目に右鰈」

 今朝はちょっと仕上げなければいけない書き物がありまして、早起きして6時台には仕事場の机に向かっておりました。机上のテレビを無音のままつけっ放しにして。
 皆さんもご存じでしょうが、この時間帯の地上波放送というのはほとんどニュース番組です。今日の「ニュースの主役」は、昭和天皇、ジダン、欽ちゃん。この3名ですな。
 以上、ライブ感を出すために書いてみました。

 で、そのまま時間は8時台へ。それまで流していたTBSのみのもんた翁にも疲れが見え始めてきたかなという頃、何気なくチャンネルをザッピング。すると驚きました。フジテレビになぜかクリッシー・ハインドの大写しが。なんと『とくダネ!』のいつものオープニングテーマ「Don’t Get Me Wrong」をプリテンダーズが素敵に生演奏(の動きを)しているではないの!お台場のフジのスタジオで。
 ときどきインサートされる小倉智昭翁、カメラを意識してなぜかドラムを叩く真似を。朝からアシッド感覚だなコレは。一気に徒労感をおぼえる私。
 演奏後の話によれば、プリテンダーズは『UDO MUSIC FESTIVAL 2006』に出演するんですね。小生寡聞にして知らず。富士スピードウェイに行きたくなっちゃったな。ところで、クリッシー・ハインドは音楽ライターからロック・ミュージシャンに転進した変り種。その点に小倉さんが妙にこだわっている点が興味深かったです。その執拗な質問責めをさらりとかわすクリッシー姐さんがクール。ロンドンに行きたくなっちゃったな。

 さて、今までここでは触れませんでしたが、7月1日にルーサー・バンドロス追悼イベント(吉岡正晴さん主催)に出演しました。その時の話。
 私と同じくゲスト・スピーカーとして出演された画家・デザイナーの岡伸昭さんが、ルーサーの86年作品『Give Me The Reason』は「低予算ジャケットの類型的な構図」と看破されていました。そういう視点であまり考えたことはなかったけれど、考えてみればマイケル某のアレだって、音が超ゴージャスなわりにはジャケットのアートワークはチープといえばチープ。R&Bのジャケットには「人物写して一丁あがり!」という作品が多いかもね。80年代まではけっしてメジャーの売れ筋じゃありませんでしたからね。
 でも、そんな「規定演技感」ってキライじゃないなあ。というわけで、下にそれ系の人魚姫ポーズを思いつくままに集めてみました。人魚姫にも左翼と右翼がいるね。
 学生時代、口の悪い友人から「黒人ってよう、みんな似たような顔して似たような曲歌いやがって」と言われるたびにムキになって反論していたものですが、20年の時間を経て、「そうかもね」と肯定する気持ちも目覚めてきた、そんな7月の朝8時半。

 それでは、また来週(かもね)。

 

  

  

  
上段左から順に
George Benson『In Your Eyes』(1978)
Frederick Knight『Knight Time』(1981)
Michael Jackson『Thriller』(1982)
Luther Vandross『Give Me The Reason』(1986)
Donna Allen 『Heaven On Earth』(1988)
Freddie Jackson『Do Me Again』(1990)
Glenn Jones『Here I Go Again』(1992)
Ray Parker Jr.『Greatest Hits』(1993)
ボブ・サップ『SAPP Time!』(2003)

Vol.54「本日スタート!」

 おおよそひと月ぶりの更新です。みなさん、お元気でしたか?
 さて。ではこの「沈黙の1ヶ月」の間の出来事を、以下、端的に。

川口大輔さんとのコンビで作った新曲「Wish」が、本日(7月14日)22時よりスタートするTBS系ドラマ『タイヨウのうた』初回放送分で流れます。2人の女優さんが歌う予定。主演は映画『パッチギ!』の沢尻エリカ嬢。私にとっては『1リットルの涙』以来2回目のご縁というわけです。久しぶりに会ったのですが、以前にはなかったオトナのオンナの魅力が。眩しいなあ。共演の松下奈緒嬢の新しい役どころにも注目。

ミント・コンディションのライブ@コットンクラブに行きました。現地で合流したゴスペラーズの村上くん、J-WAVEナビゲーター秀島史香さん等と大騒ぎ。ちなみにコットンクラブで現在配布中のパンフレットには私のコメントが掲載されています。

・J-POPのライブだと川口大輔さん、東方神起。あと、知る人ぞ知る、ペーソスを。

仲間由紀恵 with ダウンローズの2曲目にして解散シングル「恋は無期限」の制作が完了しました。私はコンセプト、プロデュース、作詞を。作曲はこれまた川口大輔さん。今回も仲間さんの歌は絶好調。7月21日、配信リリース開始。CD化は未定なり。

CHEMISTRYSOWELUをプロデュースした時のパートナーである和田昌哉さんが8月30日に『New Beginning』でアルバム・デビュー。そういやSWVにも同名アルバムがありましたな。その収録曲「Magnetic」の歌詞を書き下ろしました。

Kくんと2人きりでスタジオにこもり、何曲か作曲。リリース詳細未定ながら楽しい体験。

鈴木雅之さん、EXILEの新曲制作準備を何となく始めました。ふた組ともプライベートでは随分と前から知っているだけに、妙に新鮮な気分ではあります。

・落語にはあまり行けず。そのくせ、前々回のコラムであれだけ苦言を呈した立川談春さんはまたしっかり観ました。柳家喬太郎さんの独演会にも。とはいえ、このひと月で何が良かったかと訊かれたら、それはもう柳家喜多八師匠に尽きます。あの高座にあがる時の不貞腐れた歩き方はちょっと真似したくなるほど。無駄にハンサムなところも好み。

・8月に発売されるフォー・トップスの結成50周年ライブDVDの解説を執筆。今では年にわずか数本になったライナー執筆仕事なれど、今回は自分でもたいへん満足のいく原稿が書けました。今年の下半期はちょっと増やしてみようかな。

 それでは、また来週(か?)

Vol.53「10分トーキング~その2~」

 またまた更新もサボりがちでシーマセン。
 そのぶん来月あたりからプロデュース作品がコンスタントに世に出ていきます。それに先がけて来週には東方神起のニューシングル「Begin」が。請うご期待。

 では本日もしっかり10分間計時して書きます。 

 サッカーW杯日本チーム第1戦、私は友人たちと代官山の某レストランで観ました。もともと大物男性シンガー某氏参加の報せを聞いて足を運んだのですが、彼は試合に備えて打った針が効きすぎたとかでドタキャン。結局、隣のテーブルで盛り上がっていた「不倫は文化だ」発言で知られる俳優某氏たちと一緒にワイワイ観戦。最終的には店内100名ほどの客が一体化していましたな。パブリック・ビューイングの醍醐味ってヤツですな。

 前回のW杯は、公式テーマソングをプロデュースした関係で矢鱈と会場に足を運んだものです。ソウルでの開会式に始まり、第1戦フランス対セネガルの大番狂わせの目撃者にもなりました。あと日本チームの試合をいくつか、そして決勝のブラジル対ドイツ。熱心なファンとは呼べない私には勿体なかったかも。前述のセネガルのように、かつての宗主国と戦うチームの試合に尋常じゃないエネルギーを感じたことが強く記憶に残っています。

 話は代官山の夜に戻ります。対オーストラリア戦を観たあと、代官山のお店を出た私はゴスペラーズ黒沢薫、酒井雄二両氏とバーで合流。痛飲。黒沢くんとは先週も深酒して自宅まで送ってもらったんですけど…。初めこそサッカー敗戦の話題でしたが、それはただのきっかけで、実にいろんな話を。で、合間には黒沢くんが持ち込んだ彼お手製のカレーをいただく。いつもながらに美味。それはそれは愉しき時間で。

 ファンの方には説明する必要もありませんが、黒沢くんのカレーに関する経験と見識そして技術はプロフェッショナルの域でありまして、『ぽんカレー』なるレシピ本も出してるほど。カレーを特集した『danchu』最新号(7月号)ではなんと表紙に登場!それと山下達郎さんが表紙の『東京かわら版』最新号(6月号)はいい意味でニコイチですな。もとい、私も今年の正月に黒沢くんから秘伝「ぶりカレー」の直筆レシピをもらって以来、ことある毎に作っているのですが、これが本当に美味しい。カレーに鰤と西京味噌なんて入れちゃうわけですよ彼は。素人の私は半信半疑のままル・クルーゼに向かうのですが、それでもレシピ通り作れば成功しちゃう。料理ってまず計量からだなあと。

 川口大輔和田昌哉ファットバック・バンドシャラマー…etcのライブ記も書きたかったのですが、ここまで9分48秒。これにてお時間となりました。

 では、また来週。

 

 
東方神起「Begin」 左はCD+DVD、右はCDのみ

Vol.52「10分トーキング」

 長いゴブサタでした。ごめんなさい。本業のほうがここ数年にない忙しさでして…。 

 「これは本格的な休載ですか」等々、読者の方から励まし、ご質問、ご叱責を多数いただいております。その中で特に目にとまったのが次の1行。
 「10分でもいいから書いてください」 
 はあ。そうか。と膝を打ったのには理由があります。このフレーズ、小学校3年の時にクラス全員に日記提出を義務づけていた担任教師の口癖でした。

 というわけで、本日はしっかり10分間計時して書きます。それ以上は書かない。何か言いかけた途中でも強制終了。ちなみに冒頭からここまで、3分36秒ナリ。

 今週観たもの、その1。火曜の夜に池袋で立川談春独演会を。師匠の十八番とされる「遊女夕霧」を初めて生で。相当期待してました。
 がしかし。私にはさっぱり…夕霧がいいオンナに思えない。自分の想像力が貧困なのかもしれませんが、談春さんの語り口から「美女の姿が立ちのぼる」ような感触は一切得られず。声質は嫌いじゃないんで、間合いが生理的に受け付けないのか、もしくは単純に肌が合わないということでしょう。
 私の周りの若手落語家好きの男性の間では、談春さん一番人気ですけどね。ちなみに女性の間では柳家の花緑さんか喬太郎さんかな。少なくとも私にとってこのお題は新派なり歌舞伎なりの芝居で観るほうがいいかな、なんて思いました。
ま、彼の高座にもう足を運ばないかと訊かれたら、「いや、また行く」と答えますが。
 こうしてファンになっていくのかな。

 その2。木曜の夜に有楽町で映画『ダ・ヴィンチ・コード』の試写を。
 原作があれだけの長尺ですから、2時間半にまとめるということにそもそも無理があったのでしょう。編集がラフすぎじゃないですか?
 でも、トム・ハンクス、ポール・ベタニー、そしてオドレイ・トトゥは丹念な演技で。それはよかった。一昨年でしたか、オドレイさんと対談したのですが、「英語は難しいのでハリウッドはちょっと…」と言ってましたなあ。あと、単純にパリやロンドンのベタな観光映画としてもよいかも。あ、これって褒め言葉ですよ…。 

 というわけで、ここまで9分42秒。これにてお時間となりました。
 では、また来週。

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