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2006-04

Vol.51「長いお休みの前に」

 意味深げなタイトルですみません。明日から大型連休だねえってことなんですが。

 今年に入ってから更新のペースが著しく遅れており、このコラムを楽しみにしている方がたからは多くのお嘆きおよびお叱りをいただいております。ほんと申し訳ありません。ですが、生まれついての文章好きの私がなかなか新コラムをアップできずにいるのは、それ相応の理由があると好意的に解釈していただけないでしょうか。虫が良すぎますか。 

 さて、秘書がすこし書いているようですが、このところ私はライブ・パフォーマンスをよく観に行っています。なかでも興味深く観入ったのは丸の内のコットンクラブで立て続けに鑑賞したドウェレイとアトランティック・スターでした。

 ドウェレイについては、デトロイトのヒップホップ・シーンをレプリゼントするスラム・ビレッジ人脈の彼が、コットンクラブのような、ともすればスノビッシュな雰囲気を醸しだす異国の空間でどんなステージを披露するのかという一点に興味がありました。ここ数年のエリカ・バドゥがそうであるように、ターンテーブルを操りながら歌うという演出で自分の出自と世代をアピールするドウェレイ。現在の彼にアルバムの3、4倍もの値段の入場料をとるだけのバリューがあるかどうかは正直疑問です。がしかし、20代とおぼしき若い観客たち(みなさんリッチですな~)はその落差を自ら埋めるかのように主体的に「参加」していました。「鑑賞」ではなく。その証左となるのが、パフォーマンス後のサイン会にできた長蛇の列。人懐っこいドウェレイはファンの一人ひとりと長らく話し込み、気楽にケータイの撮影に応じていました。30分以上は続いたようです。ライブの雰囲気をつくるのは演者と観客の双方であることを示す、優しい時間でした。

 アトランティック・スターについては、かれこれもう20年以上のファン。ですから、ステージの観かたは私なりに把握しています。中心人物のひとりデイビッド・ルイスが脱退して数年、しかし私ごのみの喉を持つウェイン・ルイスはまだ残っている。そのことが嬉しい。「Silver Shadow」や「Circles」といったアップナンバーを基調として観客を盛り上げたところで、「Always」「Masterpiece」そして「Secret Lovers」等のヒット・バラードをじっくり唄い込む。長年その構成にブレはありません。

 ただ、音楽をある程度以上に深く聴いている人ならば誰しも「ヒット曲ではないけれどこの曲は歌ってほしい」と願う曲がいくつかあるものです。私はサム・ディーズというシンガー/ソングライターがアトランティック・スターに提供した作品群が好きで好きで。今回は専らサム・ディーズ作品が何曲聴けるかということに注目していました。結果は「Am I Dreaming」「Send For Me」の2曲のみ。いずれも1981年の名作アルバム『Radiant』収録の屈指の名曲ですが、90年代に入ってからの「Lookin’ For Love Again」あたりも聴きたかったなあ。ま、次回も足を運ぶ理由があるというのは幸せなことかもしれませんね。

 それでは、また来週。

 

 
左、Dwele『Some Kindaノ』(2005) 最新作となるセカンド。
右、Atlantic Starr『Yours Forever』(1983) アルバムとしてはこれが一番好き。

Vol.50「連載50回記念・レコ評まつり! 」

 本コラムもめでたく連載50回を迎えました。毎週きっちりと更新してればもう少し早くこの数字にたどり着けたはずなんですけど。ま、大目に見てくださいな。

 今回は久しぶりに最近の愛聴盤を3枚ご紹介しましょう。

 まずはUK発の女性シンガー・ソングライター、コリーヌ・ベイリー・レイ。さしずめ『UK版・安藤裕子』って感じでしょうか。二人の公式HPトップページのデザインが酷似しているのは偶然なのかな。もとい、全英アルバム・チャート初登場第1位のデビュー・アルバム『Corrine Bailey Rae』の輸入盤を購入してよく聴いています。ミニー・リパートンやリンダ・ルイスが好きな人は必殺!でしょう。橋本徹さんプロデュース、といわれても思わず納得しちゃいそうな音世界。エリカ・バドゥ、または遡ってビリー・ホリデイの発声との類似を指摘されているようですが、私はむしろカナダのネリー・ファータドのデビュー盤(2000年)を連想してしまいました。そういえばネリー嬢の3枚目のアルバムも6月にリリースされるようですね。

 お次はUS 美メロから。何と18年ぶりのカムバック作『I Let Heaven Go』を届けてくれたのはCJ アンソニー。既にインディ・ソウル愛好者の間で話題になっているようなので、わざわざ私が取り上げることはないかとも思ったのですが、記録として書いておきます。神格化されている88年度作品『Luv’s Invitation』は、当時チャッキー・ブッカー参加が話題になってたなあ、なんてことを久しぶりに思い出しました。ソウルバーに行くと、この種のトピックに尋常ならざる記憶力を発揮するお客さんにお会いすることがあります。私が80年代に書いたレコード評の一節を諳んじている人さえいて。で、その内容を忘れていた私が他人事のように感心すると、失望を露わにしたり、なかには怒りだす人もいたりして。夜の街の常識はちょいと非常識。そのすべてを私は楽しんでいるのだけれど。

 最後に、もひとつカムバック作を。ラルフ・トレスバント。彼の場合ニュー・エディションの表看板としてのアルバム・リリースやコンスタントなライブ活動があるので「カムバック」の名は相応しくないのかもしれません。ですがソロ名義での金字塔「Sensitivity」の繊細なきらめきを忘れられない人には、ラルフと聞いただけで疼きのような期待感を抱いてしまいます。12年ぶり、3枚目のソロ・アルバム『Rizz Wa Faire』は、ボビー・バレンティーノあたりの若手からの影響を感じさせる耽美派ソウルの手堅い作品でありました。何よりあのナヨナヨ声が変わってないのが嬉しいですね。

 余談ですけど、こないだ仕事場を整理してたら古いクリスマスカードを「発見」して。ボビー・バレンティーノ君がかつて在籍していたアトランタのキッズ・グループMISTAから届いたものでした。96年12月の日付。そりゃ覚えてないって。 

 それでは、また来週。 

 

  
左、Corrine Bailey Rae『Corrine Bailey Rae』(2006)
中、CJ Antony 『I Let Heaven Go』(2006)
右、Ralph Tresvant『Rizz Wa Faire』(2006)

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