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2007-06

Vol.64「PASMOが教えてくれたこと」

 1ヶ月のご無沙汰でした。松尾潔でございます(往年の玉置宏風に)。

 前回のコラムでの、ブログが苦手、という告白に賛同してくださる方が殊のほか多く、励みになりました。聞くところによると、映画『プラダを着た悪魔』メリル・ストリープが演じたミランダ役のモデルとされる米国版『VOGUE』名物編集長アナ・ウィンターも、「クールじゃない」という理由でブログを導入していないとか。ま、私の場合はそこまで言い切れるほどの確たる根拠があるわけじゃないですが。

 ただ、大のオトコが美味しいもの食べたり呑んだりしている最中に、ブログのアップ目的で、一品ずつ、もしくは一杯ずつデジカメでパシャパシャというのは如何なもんでしょう。それって男前の行為には思えないんですけど。男前かそうでないか、それが問題だ!…なんて言っておきながら、実際にやってみるとハマってみたりして。

 さて、今回は珍しく音楽とはまったく関係のないオハナシを。

 日常の足としてクルマを使うようになって長いのですが、この春、そんな生活に変化が訪れました。ちょっとした偶然から3月18日に発売されたPASMOを入手したことがきっかけとなり、以後、高校時代以来の『電車+バス+地下鉄ブーム』(語呂悪し)が到来したのであります。

 それからというもの、はっきり行き先も決めずに電車を乗り、気の向くままに乗り継いでは名前しか知らなかった小さな駅で降りて散策したり。蕎麦屋を見つけて軽く呑む。初めて入る駅前の本屋で買った文庫本を読みながら帰路に就く。こんな楽しみが今とても新鮮に感じられるのです。

 ご存じない方のために端的にご説明すると、PASMOは首都圏の鉄道・バスで共通して利用できるICカード。これ1枚あれば、地下鉄、モノレール、JR、他私鉄、加えて全バス路線を何回乗り換えても、チケットを買い直したり乗りこし精算したりする必要がありません。自動改札機やバス乗車口の読み取り装置にPASMOを軽くタッチするだけ。おまけに地下鉄の売店等でお買い物までできちゃう。チャージは上限2万円だったかな。記名タイプを購入すれば、万が一紛失しても再発行できます。

 まったく問題がないわけではありません。PASMOの利用を効率的にしているバスの均一料金システムは、一見すごくお得なようでいてその実初乗り料金の引き上げという側面もあります。がしかし、何よりこの簡便さは捨てがたい。新宿や渋谷といった世界有数の巨大ターミナル駅での乗り換え、乗り継ぎがちょっと驚いてしまうくらいスムーズになりました。今になってわかりましたが、1日に何度も券売機に並ぶ行為は思いのほかストレス発生の理由になっていたんですね。とりわけ夜、こっちが素面なのに券売機の行列は酔客だらけ、みたいな場合は特に。

 これまで混雑時の銀座や渋谷や新宿に映画を観に行こうと思っても、マイカーゆえに渋滞や駐車場待ちの行列に結構な時間を要し、映画館を目前にしながら開映時刻に間に合わず、ということがよくありました。まあ早め早めに行動すれば良いのでしょうが、いつも必ずしもそういう余裕があるわけではないので。ところが地下鉄や電車だと時間が読める!こりゃすごい。

 何だか、PASMOの効用というより単に公共交通機関の利点を語っているだけのような気もしてきました。それでも、学生時代は他の選択肢がなくて利用していた地下鉄や電車の効用にあらためて気づかせてくれたのがPASMOであることは間違いありません。券売機に並ぶのは嫌い、でも乗客ウォッチングは好き、な人(私含む)にはピッタリ。

 あと、これが最大の理由ではないけれど、公共交通機関を利用することにより、地球環境のために悪いことをひとつ止めたという実感を抱けるのは予想外のメリットでした。マイカー移動時の大半は単独乗車ですからね。自分ひとりが移動するために少なくはない化石燃料を使って焚き火している、みたいな漠たる罪悪感が払拭できます。

 レコーディング終了が深夜や早朝になると予めわかっている時、大きい機材の持ち運びが必要な時などは、従来通りクルマを運転しています。勿論、ひとりでクルマを転がす愉しみも悪くはないものです。できれば音楽もヘッドフォンではなく大きなスピーカーから聴いていたいし。しかし、都心でマイカー利用は何しろ効率が悪すぎる。1枚のPASMOがそれを教えてくれました。

 残念ながら現在PASMOは新規発行休止中で、再開は9月の予定だそうです。一応、念のため。

 それでは、また次回。

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