Home > Archives > 2008-08

2008-08

Vol.69「クインシー・ジョーンズ、筒美京平」

パリ在住の音楽家・鷺巣詩郎さんに誘われて、先月スイスのモントルーに行ってきました。今年で42回目を数える『モントルー・ジャズ・フェスティバル』、そのハイライトである「クインシー・ジョーンズ生誕75周年記念コンサート」を観るためです。
先のJASRAC賞で奇しくも鷺巣さんは銀賞、私は銅賞でしたから、それを一緒に祝うという意味もありました。この10年のあいだに鷺巣さんとは何度かヨーロッパ旅行をご一緒していますが、そのどれもが例外なく「食」にフォーカスした旅。今回のように「音楽」をメインに据えた旅は意外にも初めてかも。とはいえ、音楽業界きっての美食家で知られる鷺巣さんのことですから 、素敵なレストランめぐりを欠かすわけはありませんが。

ところで、いま私は来春あたりの刊行を目標にして単行本を書きおろし中です。柱のひとつにクインシー・ジョーンズ(以下、Q)に関する章があります。今回モントルーまでQを追っかけるにあたっては、単行本執筆のための取材が第一の目的でした。
懇意にしていただいている音楽評論家の吉岡正晴さんもこのイベントに並々ならぬご興味をお持ちでしたが、残念ながらモントルー行きは叶わず。そんな吉岡氏に私は現地から何度か報告を入れましたが、その一部が数回にわたって彼のブログにアップされています。是非ご一読ください。
Qにとって最後かもと噂される(だからこそいくつかの仕事をキャンセルして行きました!)この集大成的コンサートのデータ的側面を知るためには、吉岡さんのブログを読んでいただくのが一番。さすがはデータ収集&整理の鬼・吉岡さん、実際に行った私が舌をまく内容に仕上がっています。
ですから、本コラムでは、幸運にも単独取材で訊くことができたQの言葉を少しだけご紹介しようかと。今回私がそれだけQに接近できたのは、鷺巣さんのお力添えでフェスティバルのプレスIDカードを得たおかげです。この場を借りて鷺巣さんに感謝。

私がQに会うのはこれが二度目。前回は1995年、『Qズ・ジューク・ジョイント』のプロモーションでデビュー前のタミアを帯同して来日した時ですから、もう13年も昔のこと。私が27歳の時のお話です。滞在先のホテルを訪ねてインタビューしました。
その時の詳細については前述の単行本に詳しく記すとして、なかでも強く印象に残ったのは「あなたが音楽とビジネスをこれまでにない高い次元で両立できた秘訣は?」いう問いかけに対しての怒気含みの返答でした。いわく「俺がやってきたことは、音楽とビジネス、じゃない。その二つを一つに統合したもの、つまり、音楽ビジネス、なんだ。わかったか、若造!」と。
その後の私の人生を決定づけるに十分なひと言。大袈裟に聞こえるかもしれませんが、音楽プロデュースこそ男子一生の仕事、とさえ思いました。翌年、私はジョン・Bの「Simple Melody」を初リミックス、プロデュース業に乗り出すことになります。

今回の謁見の機会に、私はあえて13年前と同じ質問を投げかけてみました。わざわざ「前回も同じことを訊きましたが」と言い添えて。
さて、Qはどう答えたと思います?
「健康。まずは健康だよ。今の私は太り過ぎだ。まずはダイエットだね。」
……これには僕もまいったね、ですよ。正直、ちょっと脱力もしました。

しかし、前回から13年、 音楽プロデューサーとしてそれなりのups and downsを経験した私には、アティテュードを説かれて半泣きになった前回よりも、むしろ今回の返答のほうが身に沁みるのです。
ただいま75歳のQ。前回、ギラギラしたオーラに私が戸惑ってしまうほどのQは「まだ」62歳でした。その時の私は「もう」62歳と捉えていましたが、それも今ならば非常に偏ったものの見方だったとわかります。
現在Qは映画の企画を9本同時に進行させているそうです。マイケル・ジャクソンとのプロジェクトについての噂も絶えることがありません。そのアイディアの量とスピードに肉体が付いていかないのを歯痒く思っているふうでもありました。
75歳。今の日本では「後期高齢者」と呼ばれ始める年齢です。この呼び名がいかに馬鹿げた、そして間違ったものであるかを、日本から遠く離れたモントルーで痛感しました。気がつけば私も若者と呼ばれることのない40歳になったからでしょうか。それともQと同い年の父親を持つ「息子」だからでしょうか。
その日のクロード・ノブス(フェスティバル創設者)との公開対談、もとい記者会見で、Qは「私は生涯引退しない」と宣言しました。

変化を続けても、変節はしない。クインシー・ジョーンズはぶれない人です。

帰国した翌日には日本を代表する作曲家・筒美京平さんと対談しました。弊社秘書もお伝えしたように、現在全国のJFN系FM局で順次放送中の番組『ROOTS vol. 52 筒美京平~孤高のメロディメーカー~』のナビゲーターとして、です。
JASRAC賞授賞式のスピーチでも述べたのですが、筒美京平さん、山下達郎さん、そして鷺巣詩郎さんのお三方は、私が音楽プロデューサーとしての道を歩むにあたって最も大きな影響と実践的アドバイスを与えてくださった方々です。しかし、最年長の京平先生とは面識を得てからせいぜい5、6年ほどしか経っていません。コラボレーション作品として初めてのヒット『恋のダウンロード』からですと、まだ2年半。
ですから、京平先生サイドから「対談相手は筒美京平をよく知る松尾さんに」というご指名を受けた時は、ちょっとした逡巡がありました。自分の年齢を超える長いキャリアを誇る巨星・筒美京平に対して、私が何を話せというのでしょう。というわけで、今回は対談相手というよりもインタビュアーという心構えで現場に臨みました。
ま、結局は予定を大幅に上回る長時間のインタビューになりましたけどね。実はまだ私も編集済みの内容を確認していないのですよ。聴くのがちょっと怖くて…。
まだ放送が間に合うエリアの方は地元のJFN局のタイムスケジュールをご確認のうえ、どうかご清聴ください。ゲスト多数ですよ。ちなみにTOKYO FMでは8月9日(土)5:00~5:55の放送です。

それでは、また次回。

Home > Archives > 2008-08

Return to page top